
小泉進次郎防衛相が、存在感の向上に努めている。SNSなども駆使し、日本周辺の他国軍の動向や、自衛隊の対応を積極的に発信。「経験不足」の前評判は、就任1カ月で払拭しつつあるようだ。ただ、今後は安全保障関連3文書の改定など難題が待ち受ける。国民の理解を得つつ、防衛力強化に道筋を付けられるか、真価が問われる。
小泉氏は22日、就任後初めて沖縄県を訪問し、南西防衛の最前線となる宮古島、石垣島の現状を確認。この後、記者団に「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らし、わが国の領土・領海・領空を守り抜くことへの思いをより強くした」と述べた。
小泉氏は、就任直後から自衛隊の司令部などを精力的に視察し、現場重視の姿勢をアピール。海上自衛隊横須賀基地では、オーストラリアが導入を決めた新型艦のベースとなる「もがみ型」護衛艦の艦上から、防衛装備品のトップセールス強化にも意欲を示した。
同盟・同志国のカウンターパートとの会談も重ねる。ヘグセス米国防長官には、地元・横須賀名物の「スカジャン」を贈るなど、個人的な関係構築に腐心。防衛省幹部は「国防を担う使命感がとても強い」と評価する。
小泉氏は、10月の自民党総裁選で決選投票へ進んだものの、高市早苗首相(党総裁)に敗れた。「安全運転」に徹した結果、討論で手元資料に目を落とす場面が目立つなど、持ち味の発信力が失われたことが敗因との見方がある。
日本周辺の安保環境が厳しさを増す中、防衛相として実績を残せるかは、小泉氏にとって重要な試金石となりそうだ。山積する課題のうち、来年中を目指す3文書改定の議論が、大きな関門になるのは間違いない。
焦点の一つは、防衛費を国内総生産(GDP)比2%からどこまで引き上げるか。国民負担の増加につながりかねず、小泉氏は丁寧な説明が求められる。装備品の輸出を「救難」や「輸送」など5類型に限るルール緩和も、国会で野党の厳しい追及を受けるのは必至だ。
台湾有事を巡る首相発言は、中国の激しい反発を招いた。今後、軍事的な威圧が一段と強まる展開も予想され、小泉氏の手腕が試される。
【時事通信社】
〔写真説明〕沖縄県石垣市の中山義隆市長と面会する小泉進次郎防衛相=22日午後、石垣市
2025年11月23日 07時01分