中国客減、長期化を警戒=訪日自粛要請、「春節」が焦点



中国政府の日本への渡航自粛要請を受け、国内の観光関連業界では、航空便減便や宿泊取り消しといった影響の長期化に警戒感が強まっている。ただ、沖縄県の尖閣諸島を巡る問題で観光客が減少した過去の経緯から、冷静に受け止める向きもある。来年2月中旬から始まる「春節(旧正月)」の動向が焦点となりそうだ。

関西空港を運営する関西エアポート(大阪府泉佐野市)は、12月に運航予定の中国路線(香港・マカオ除く)が計画から34%減ったと明らかにした。中国系航空会社の減便が理由で、来年1~3月も平均28%の減少を見込む。大阪府内のホテル21社では中国人宿泊者の50~70%の年内予約が取り消された。大阪観光局の溝畑宏理事長は、記者会見で「中国客に依存しているホテルでは経営に大きなダメージが出ている」と述べた。

中国からの訪日観光客数は尖閣問題やコロナ禍で減少したが、今年1~10月には国・地域別で最多の約820万人を記録した。消費額も首位で、観光業界での存在感は抜群だ。

訪日客による宿泊の2割弱を中国人が占める京都市。市観光協会は、中国からの需要が半減すると来年1月の客室稼働率は見通しから約6%低下すると試算しており、「春節まで影響が及ぶ可能性が高い」と懸念する。

一方で、過去の尖閣問題などを教訓にした冷静な対応も目立つ。中国人団体客でキャンセルが出た「蒲郡ホテル」(愛知県蒲郡市)は、「日中関係が悪化した局面で(取り消しは)繰り返し起きており、想定の範囲内だ。リスクとして認識している」との見解だ。

特定の国に依存せず、さまざまな国からの訪日客の取り込みを強化してきた企業も。インバウンド専業でバス運行を行うジョイフル観光(東京)は、自粛によるキャンセルで12月は4000万円の損失を見込むが、業績全体への影響は大きくはない。もともと欧米客も多く、原田百合専務は「他の国からの仕事を取ってくるだけ」と語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕銀座で買い物を楽しむ外国人観光客ら=4日午後、東京都中央区

2025年12月05日 07時42分


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