中南米首脳に温度差=4カ国が授賞式出席―ノーベル平和賞



【サンパウロ時事】今年のノーベル平和賞を巡り中南米首脳の間で温度差が浮き彫りとなった。受賞したベネズエラの野党指導者マリア・マチャド氏を祝福しようと、パナマやアルゼンチンなど4カ国の首脳が10日の授賞式に駆け付けたが、ブラジルやメキシコなどは無関心を装っている。米国との距離感が背景にちらつく。

ベネズエラのマドゥロ大統領は9日夜、国営テレビで、授賞式の開催地オスロでマチャド氏の受賞について「血まみれのノーベル賞」だとして抗議する活動があったと紹介し、「ベネズエラの平和を求めるために通りに繰り出した」と歓迎した。間接的に平和賞授与を非難した形だ。

パナマのムリノ大統領はアルゼンチン、エクアドル、パラグアイの各大統領と並んで授賞式に出席した様子をX(旧ツイッター)に投稿。「きょうだいのベネズエラ国民の平和と民主主義、自由のために一緒にいる」と強調した。

4カ国はいずれも右派政権。反米左派のマドゥロ政権に批判的で、トランプ米政権と連携を強める。パナマはかつて南米産麻薬の対米密輸中継地で、故ノリエガ将軍が弾圧で国を支配。現在のベネズエラは、当時のパナマと状況が似ている。

メキシコのシェインバウム大統領はこれまで、マチャド氏受賞への評価を避けて「国民主権と国民の自決」を尊重すると述べるにとどめた。米国は麻薬対策を名目に軍を投入してベネズエラ近海で密輸船への攻撃を繰り返しており、マチャド氏も支持。メキシコは対象を同国に広げる構えのトランプ大統領に反対の立場を表明している。

米軍の動向に懸念を示すブラジルのルラ大統領も、今回の授賞について目立った発言はない。

米紙ニューヨーク・タイムズは、今年の平和賞が「これまでよりもはるかに政治色を帯びている」という専門家の見解を紹介し、トランプ氏に賛同するマチャド氏の言動が受賞に値するのか多くの疑問の声が上がっていると報じている。

【時事通信社】 〔写真説明〕10日、オスロで行われたノーベル平和賞授賞式に出席したパナマのムリノ大統領(中央)とアルゼンチンのミレイ大統領(中央右)(ロイター時事)

2025年12月11日 14時31分


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