日本企業によるM&A(合併・買収)が活況だ。2025年は過去最高となった前年を上回るペースで伸長。中でも未公開株に投資するプライベート・エクイティー(PE)ファンドと組んで非上場化する動きが目立つ。物言う株主(アクティビスト)の台頭や東証の上場基準厳格化を背景に、いったん市場から退出。意思決定の迅速化を図るとともに、ファンドの資金と知見を使い、M&Aを含む企業価値向上を目指す動きが出ている。
M&A調査のレコフデータ(東京)によると、日本企業が関わったM&A件数は24年に4700件と前年から17%増えた。今年は11月までで4600件近くと、昨年を上回る見込みだ。大手企業によるグループ再編や成長機会を求めて海外企業を買収するケースが増えているが、国内M&Aでは経営陣による自社買収(MBO)などによる非上場化案件も目立ち、MBOは24年が18件、25年は既に28件と前年を大幅に上回っている。
米M&Aアドバイザリー大手、フーリハン・ローキー日本法人の渡辺章博会長は現状を1980年代、2000年代に続く、「第3次ブーム」と評価。非上場化案件の増加については自身が取締役会議長として携わった23年の東芝の非上場化が、経営者と株主双方が市場からの退出を選択肢として強く意識するきっかけとなったと指摘する。
非上場化を巡っては、従来多かった大企業による上場子会社の売却・併合だけでなく、ベネッセやマンダムのようなPEファンドを介したMBOも目立つ。EYストラテジー・アンド・コンサルティング(東京)の森田博士パートナーは「株価が堅調なうちに行動を起こそうという経営者は多い。問い合わせや扱いが増えている」と話す。
コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニー(東京)の呉文翔パートナーは「成長余力はあるが、規模が小さく上場コストが重いという会社が非上場化を選んでいる。いったん、しゃがんで再成長を狙うケースもある」と指摘。企業価値向上へファンド資金を活用して、M&Aに踏み切る事例も多く、ドラッグストアやスーパーなどで「再編が進む」との見方を示す。
【時事通信社】
2025年12月12日 07時24分
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