
7月の参院選で、有権者が投票所内をスマートフォンなどで撮影する行為を23%の自治体が禁止したことが、時事通信の調査で分かった。最も多かった回答は「『ご遠慮ください』など自粛を要請」で60%。一方、17%は「他人に迷惑がかからなければ可能」としており、対応が割れた。
調査は都道府県庁所在地と政令市(計52市区)の選挙管理委員会に行い、10月下旬までに回答を得た。投票所内撮影は禁止12市区、自粛要請31市、可能9市だった。
記載台などでの投票用紙の撮影に限ると、禁止は8市区(15%)に減少。自粛要請は28市(54%)、可能は16市(31%)となった。
参院選では撮影禁止としなかった盛岡、横浜、相模原、富山、静岡の5市は規制強化も含め「対応変更を検討中」と回答した。
公選法第60条は「投票所の秩序をみだす者」を制止・退出させることができると定めている。ただ、撮影を直接禁じる規定はなく、トラブルを懸念する選管は対応に苦慮。自由記述では14市区が国に対し、公選法で撮影禁止を明記したり、統一方針を示したりするなどの対策を求めた。
先の参院選では、パチンコ店経営者らが従業員に特定候補の氏名を記入した投票用紙を撮影、送信させた公選法違反(買収の約束)事件が発生。見返りに3000~4000円の報酬を約束していたとされる。
事件とは別に、X(旧ツイッター)では投票用紙の写真に「○○候補に投票しました」などと添えた投稿が見られた。こうした投稿は選挙運動に当たる可能性があり、運動期間後の投開票日に行うと、公選法違反の恐れもある。
選管からは撮影に対する懸念の声が相次いだ。写真の送信やSNS投稿により、憲法が保障する「秘密投票」の原則を損なうこと、シャッター音や他人の映り込みによるトラブル、規制への法的根拠が示せない―などが挙がった。
【時事通信社】
〔写真説明〕東京都内の投票所で投票する有権者=7月20日(AFP時事)
2025年12月12日 07時09分