
日本政府はトランプ米大統領が唱え始めた「ドンロー主義」への警戒を強めている。南北米大陸を中心とする「西半球」で勢力圏確立を目指す同主義は、日本を含む「東半球」での米国の存在感低下につながりかねないためだ。中国が覇権主義的な動きを強める中、日本政府はアジアの重要性を訴え、米国のつなぎ留めを図りたい考えだ。
「米政府が先般発表した国家安全保障戦略には『自由で開かれたインド太平洋』へのコミットメント(関与)などが記載されている」。木原稔官房長官は8日の記者会見で、米国のアジア関与が薄まる懸念はないかと問われ、こう反論した。
ドンロー主義は南北米大陸とユーラシア大陸の相互不干渉をうたった19世紀初頭の「モンロー主義」と、トランプ氏のファーストネーム「ドナルド」を掛け合わせた造語だ。トランプ政権は昨年12月に発表した国家安保戦略の地域別戦略のトップ項目に「西半球」を据え、「米国はモンロー主義を再び主張し実行する」と明記。それを具体化するように今月初めにベネズエラを攻撃すると、トランプ氏は「ドンロー主義」を宣言した。
地域別戦略は2番目の項目に「アジア」を掲げ、インド太平洋重視の姿勢もにじませた。しかし、トランプ氏はベネズエラに続いてコロンビアなどへの軍事介入を示唆。デンマーク自治領グリーンランドの領有にも意欲を見せている。アジアで米国の存在感が相対的に低下すれば、中国が間隙(かんげき)を突いて威圧的行動を強める可能性がある。
トランプ氏は昨年10月に米中両国を「G2」と表現しており、ドンロー主義の先に両国が勢力圏を分け合う「G2」論が再燃する恐れもある。日本外務省幹部は「インド太平洋の平和と安定は米国の存在なくしてあり得ない」と危機感を示した。
トランプ氏は4月に訪中を予定する。米中首脳が急接近するシナリオも否定できず、高市早苗首相はこれに先立って3月にも訪米し、トランプ氏と対中戦略を擦り合わせたい考えだ。日本政府関係者は「アジアの安定が米国の利益にも重要だと今まで以上に示していく必要がある」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕記者会見する木原稔官房長官=8日午前、首相官邸
2026年01月09日 07時40分