
衆院憲法審査会は9日、先の衆院選後初となる討議を行った。与党の自民党と日本維新の会は憲法改正の実現に向け、一気に議論を加速させる姿勢を見せた。大規模災害時などの対応を定める緊急事態条項の創設に照準を絞り、条文案の検討に入るよう迫った。野党第1党の中道改革連合は「いきなり条文案起草は乱暴すぎる」(幹部)と慎重な対応を求め、ブレーキをかけた。
衆院で改憲発議に必要な3分の2を大きく超える、4分の3の議席を占める与党は「数の力」で押し切る構え。連立政権合意は緊急事態条項創設について「2026年度中に条文案の国会提出を目指す」と明記しており、「有言実行」を期す。
与党筆頭幹事の新藤義孝元総務相(自民)は緊急事態条項の創設を目指す方針を強調。「いよいよ条文案を詰める段階に入っている」と述べた。維新の馬場伸幸前代表は「(憲法審の会場を)自民(議員)が席巻している風景を目にし、大変心強い」と述べ、条文案をまとめるよう訴えた。
国民民主党の玉木雄一郎代表も条文案作成に意欲を示し、与党と足並みをそろえた。自民、維新は25年6月、公明党、国民民主などと共に緊急事態条項に関する改憲骨子案をまとめている。
自民は自衛隊を明記する9条改正も重視するが、維新と考え方に隔たりがある。自民関係者は「各党の距離が近い緊急事態条項を改憲の突破口にするのがいい」と指摘した。
高市早苗首相(自民総裁)は「国会発議が早期に実現することを期待する」と繰り返し、自ら改憲の旗を振る。憲法審査会長には自らに近い保守派の古屋圭司前選対委員長を充てるなど「改憲シフト」を整えた。
一方、中道の国重徹氏は緊急事態条項について「議論を深める必要がある」と応じつつ、「憲法論議は拙速に進めるべきではない」とけん制した。中道は立憲民主党と公明の衆院議員で結成された。国重氏は公明出身だが、立民は過去の憲法審査会で「緊急事態条項は必要ない」と表明してきた。国重氏は審査会後、記者団に「まずは党内で議論をしていくことが大事だ」と語った。
改憲の発議には参院でも3分の2の賛成が必要となる。与党は参院では少数で、予算審議に続き「参院の壁」に直面しそうだ。
参院の定数は248で、与党会派は3分の2まで46議席足りない。国民民主、参政党、日本保守党や無所属議員も巻き込んで多数派を形成できるかが焦点だ。
ただ、参院の憲法審査会長は立民議員が務めており、与党主導で議論を進めるのは難しい。緊急事態条項は憲法が規定する参院の緊急集会の機能の制限につながりかねないとして、参院の与野党に慎重論が根強い。
【時事通信社】
〔写真説明〕首相官邸に入る高市早苗首相=9日、東京・永田町
〔写真説明〕衆院憲法審査会に臨む古屋圭司会長(中央)=9日、国会内
2026年04月10日 07時04分