
再審制度を見直す刑事訴訟法改正案は、検察官の不服申し立て(抗告)を本則で「原則禁止」とし、国会提出にこぎ着けた。ただ、証拠の目的外使用の禁止など、冤罪(えんざい)被害者の救済を妨げかねない置き去りの論点もある。例外的に抗告が認められる「抜け道」も残り、野党側は修正を求める構えだ。
「残された一番の課題は目的外使用だ」。再審制度の見直しに取り組んできた自民党の井出庸生衆院議員は14日、X(旧ツイッター)でこう指摘した。
改正案は検察側から開示された証拠について、再審手続きやその準備以外の目的で第三者に提供することを禁止。違反した場合の罰則として1年以下の拘禁刑か50万円以下の罰金を定める。
法務省は「関係者の名誉・プライバシー保護」が理由だと説明するが、支援者や報道機関も提供禁止の対象に当たるかどうかは明確にしていない。
再審無罪となった袴田巌さんのケースでは、死刑判決の決め手とされた「血染めの衣類」のカラー写真が弁護側に開示され、支援者や報道機関に共有されたことで、その不自然さが白日の下にさらされた。
検察官出身の山尾志桜里・元衆院議員はXで「写真が報道されなかったら死刑が執行された可能性は十分にある」との見方を示しており、野党は規定の削除を訴えている。
改正案は証拠開示に関し、裁判所が再審請求との「関連性や必要性」を考慮して相当と認めるときは、「検察に証拠提出を命じなければならない」との規定を新設。付則に「証拠の範囲が不当に狭くならないよう留意されなければならない」とも記した。
証拠開示が進むようにも見えるが、野党は「関連性」という文言に疑いの目を向ける。弁護士出身の泉房穂参院議員(立憲民主党会派)は14日の参院法務委員会で、関連性が開示しない理由に使われ「これまでより証拠が出にくく」なる恐れがあると指摘した。
抗告禁止については、例外として「十分な根拠がある場合」に限って可能とする規定が残った。井出氏が「機械的な抗告はなくなる」としたように、一定程度評価する向きもある。ただ、法務省は当初案では抗告を温存し、本則に原則禁止を盛り込むことに最後まで抵抗しており、今後も抗告が続くことを危ぶむ声が出ている。
政府案を不十分とみる中道改革連合、チームみらい、共産の野党3党は15日、証拠の目的外使用を禁止せず、幅広い開示や抗告の全面禁止を打ち出した対案を衆院に提出。並行審議と修正協議を自民に呼び掛ける方針だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕自民党法務部会・司法制度調査会合同会議を終え、再審制度見直しに関して記者団の取材に応じる井出庸生衆院議員=7日、東京・永田町の同党本部
〔写真説明〕自民党法務部会・司法制度調査会合同会議を終え、記者会見に臨む(左から)森雅子元法相、稲田朋美元政調会長、柴山昌彦元文部科学相、古庄玄知参院議員、鈴木貴子広報本部長=13日、東京・永田町の同党本部
2026年05月17日 07時04分