
27日に成立した「国家情報会議」設置法は、高市早苗首相肝煎りのインテリジェンス(情報収集・分析)改革の第1弾だ。首相は同法に基づく新組織を7月にも発足させ、これを足掛かりにスパイ防止関連法制整備など改革の「本丸」に乗り出す青写真を描く。ただ、改革が進むにつれ、人権侵害を懸念する声が強まりそうだ。
「この法律は自民党総裁選で2回にわたり公約で(掲げ)重視してきた」。首相は27日、設置法成立を受け、記者団に感慨深げに語った。その上で「改革の第一歩だ。一つ一つ丁寧かつ着実に検討を進めていく」とさらなる改革に意欲を示した。
今回の設置法はインテリジェンス活動の司令塔機能の強化が主眼だ。首相を議長に9閣僚で構成する「国家情報会議」を設置。内閣情報調査室を「国家情報局」に格上げし、総合調整権限を持たせる。政府関係者は「情報を上げろと命令できるようになる。政府内の緊張感は高まる」と語り、各省庁の縦割り打破につながると解説する。
もっとも、設置法は行政機関の関係を律するものにすぎず、「新たに情報収集機能を追加することはない」(首相)。首相が「本丸」として見据えるのは、自民党と日本維新の会の連立政権合意書に盛り込んだ(1)対外情報庁の創設(2)情報要員養成機関の創設(3)スパイ防止関連法制整備―だ。
政府は早ければ7月と想定する情報会議などの立ち上げに合わせ、有識者会議を設けて「本丸」の検討を本格化させる構えだ。政府高官は「ハードルは情報会議より格段に上がる」と指摘する。
対外情報庁創設で首相が念頭に置くのは米中央情報局(CIA)など。外務省の「国際テロ情報収集ユニット」を土台に、人的情報収集能力(ヒューミント)を段階的に強化していく案が浮上しているが、創設されれば政府の権限が強まることが予想され、人権侵害につながるとの批判は強い。
自民は1985年にスパイ防止法案を国会に提出しながら、強い反対を受けて断念した経緯があり、スパイ防止関連法制整備は当時からの「宿題」。これに対しては野党から「人権侵害の恐れを回避できないなら法制化を断念してもらうしかない」(立民中堅)との声が早くも上がっている。
国家情報会議設置法は中道改革連合などの賛成を得て比較的スムーズに成立したものの、不安の声が消えたわけではない。衆参両院の採決時にはプライバシー配慮などを求める付帯決議が採択され、中道の小川淳也代表は27日、記者団に「(政府には)慎重な運用を求めたい」と語った。
立憲民主党は中道と一線を画し、「基本的人権の侵害防止」「政治的中立性の確保」などの明記を求める修正案を提出。否決を受け、27日の採決で設置法に反対した。立民の鬼木誠氏は採決前の反対討論で「(同法は)国民の人権を著しく侵害しかねない危険性を持つ」と警鐘を鳴らした。
【時事通信社】
〔写真説明〕「国家情報会議」設置法が成立し、記者団の取材に応じる高市早苗首相=27日午後、首相官邸
〔写真説明〕参院本会議で「国家情報会議」設置法が可決、成立し、一礼する木原稔官房長官(中央)=27日午後、国会内
2026年05月28日 07時07分