
【ワシントン、北京時事】激しさを増す人工知能(AI)開発競争と安全性をどう両立させるか。24日に見込まれる米中首脳会談を前に、AIの暴走や悪用を防ぐ「AI危機管理」を巡る論争が世界に広がっている。米有力AI企業トップが唱えた脅威論がきっかけだ。英メディアによると、両国は閣僚級で20日にAIについて協議する見通しで、ハイテク覇権を争う二大国が歩み寄れるかも焦点となる。
口火を切ったのは、米AI新興アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)だ。AIがインターネット全体を乗っ取る恐れがあると警告し、最先端モデルの開発ペースの減速と安全性の検査を提唱。オープンAIのサム・アルトマンCEOや米実業家イーロン・マスク氏も賛同した。
背景には、AIで米を猛追する中国への警戒がある。アモデイ氏は安全性を重視し、対中半導体輸出規制やAIモデルの不正利用取り締まりも要求した。これに対して中国は「脅威、対立、悪質な競争をあおっている」(外務省)と反発する。
米中と一線を画す「第三極」を目指すのが欧州だ。ドイツはAI危機管理に米中の参加が不可欠と指摘し、スペインは「国際協定」が必要と訴える。原子力の平和利用を認めつつ核兵器の拡散を防ぐ国際条約になぞらえ、開発を続けながら共通ルールで暴走や悪用を最小限に抑える発想だ。
だが、米中はあくまでAI開発を急ぐ構えだ。トランプ米大統領は「AIが世界を支配し、人類を滅ぼすというのはデマだ」と強弁。習近平中国国家主席も「世界の科学技術競争で主導権を握る戦略手段」と位置付ける。いずれも、自国が開発を減速させれば相手を利すると懸念する。
米中はAIの危険性に対処するルール作りで隔たりが大きい。トランプ政権でAI分野の特別顧問を務めたデービッド・サックス氏は「開発減速で規制論議の時間は稼げるが、中国が世界的合意に加わる可能性は極めて低い」と指摘。中国側は米主導のルールを自国への「封じ込め」と見なす。
AI論争は、企業レベルの安全対策から国家間の危機管理へと舞台を移した。米中首脳が重大事故の相互通報や共通の安全検査で合意すれば、開発競争の過熱を防ぐ「ガードレール」となる。一方、危機管理を自国の優位を守る道具にすれば、共通ルールの策定は遠のく。AIの安全を覇権争いから切り離せるか。首脳会談に向けた両国の対話がその試金石となる。
【時事通信社】
〔写真説明〕握手するベセント米財務長官(左)と中国の何立峰副首相=2025年5月、スイス・ジュネーブ(EPA時事)
2026年09月17日 07時41分