男女ともに仕事と家庭を両立する観点から、男性公務員に育児休業を促す取り組みが全国の自治体で広がっている。収入減や業務に支障を来す懸念などから、男性の育休取得は進まなかったが、こうした障壁を乗り越えるための独自制度も登場。「男性の育休取得は当たり前」という雰囲気づくりで効果を挙げるケースも出ている。
山梨県は8月、男性職員が「最低3カ月間」在宅で育児に携われるようにする制度を新設した。育休で収入が減ることへの懸念に対応するため、テレワークや時短勤務との組み合わせも可能とした。また、休む職員の業務を補った同僚職員には勤勉手当を加算。育休確保を実現した職場では、管理職の人事評価も加点する。
県によると、年内にもテレワークと組み合わせた同制度初の適用事例が誕生する見通し。県幹部は「子どもができたら職場全体で応援できるような風土をつくる。同時に、子どもがいる人もいない人も気持ちよく働けるようにしたい」と強調する。
佐賀県は「逆転の発想」で取得率アップを果たした。育児関連の休暇と年次休暇などを組み合わせて計14日以上の取得を促す制度を2021年10月から導入。取得しない職員の所属長は「不取得理由書」を提出する必要がある。「取得を呼び掛けたか」「業務の割り振りを見直したか」など細かく記入することで、「取るのが当たり前だと意識が大きく変わってきている」(県幹部)。今月7日時点で子どもの誕生を機に計2週間以上の休暇を取得する男性職員は100%に達している。
一方、部署によっては取得向上に結び付きにくいケースもある。子どもが生まれた男性職員の元に市長が出向いて祝福し、育休取得を呼び掛ける福島市では、4~6月の取得率が5割を超えた。しかし、24時間体制で救急対応を担う消防部局の育休対象者のうち、実際に取得した職員はゼロ。人事課は「業務に支障を来す恐れから、育休を取りづらい面もあった」と語る。
21年度の男性地方公務員の育休取得率は警察・消防などを除き34.5%。政府が6月にまとめた「こども未来戦略方針」では、25年までに85%に引き上げる目標を掲げて取得を後押しする。
男性育休の義務化を提唱してきた市民団体の天野妙代表は「共働きが大半を占める中で、育休を取りやすい環境の整備は優秀な人材の確保にもつながる」と分析。上司が事前に「育休は多様な視点を養う絶好の機会であり、培ったアイデアを職場に還元してほしい」と伝えることで、職員の意識も変わる可能性があると提案する。
【時事通信社】
2023年09月18日 14時40分
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