
農業の担い手不足が深刻化する中、人工知能(AI)やセンサー技術を活用し、屋内で効率的に野菜や果物を育てる動きが広がっている。「植物工場」に加え、魚介類の養殖と水耕栽培を組み合わせた「アクアポニックス」も始動。政府も重点投資対象として取り組みを後押ししている。
米国でイチゴの植物工場を運営するオイシイファームはこのほど、東京都羽村市に研究開発拠点を新設した。トマトなど他の作物の効率的な栽培や、作付けや包装を自動で行うロボットの開発などを進める計画だ。
受粉に欠かせないミツバチの飼育環境をAIで管理し、イチゴの受粉率を95%に高めるなど、先端技術を駆使する同社。創業者の古賀大貴最高経営責任者は「1年間で屋外農場の数百年分の品種改良ができる」と、季節や天候に左右されない植物工場のメリットを強調する。
NTT東日本などは6月、ニシキゴイの養殖と高麗ニンジンの栽培を組み合わせたアクアポニックスの実証実験を都内で開始した。AIやセンサーで光量や温度を制御し、畑では数年かかる出荷までの期間を数カ月に短縮。農薬を使わずふんを肥料にすることで「捨てられてきた、成分が豊富な葉や茎のビジネスもできる」(同社)という。
農林水産省によると、農業を主な収入源にする農家は、2010年の約205万人から26年に約98万人まで減少した。生産維持に向け、政府は異業種からの参入や最新技術の活用を促しており、植物工場については40年度までに4.6兆円の官民投資目標を掲げる。
植物工場は現在国内に440施設ほどあり、10年前に比べ1.4倍に増加。ただ、新規参入には多額の初期費用が必要になり、投資回収できずに倒産するケースも見られる。ある経営者は「人手は減らせても、設備投資や電気代が膨らめば採算は厳しくなる」と話す。生産性や付加価値の向上が引き続き大きな課題になっている。
【時事通信社】
〔写真説明〕NTT東日本のアクアポニックスラボ=7日、東京都調布市
2026年08月24日 07時05分