
トランプ米大統領が、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記との年内の首脳会談に意欲を示している。米韓合同軍事演習を縮小させるなど融和的な姿勢を見せるが、北朝鮮の反応は冷淡だ。対話実現のカギとなるものは何か、礒崎敦仁・慶応大教授(北朝鮮政治外交)に聞いた。
―米朝首脳会談は実現するか。
トランプ氏次第だ。正恩氏は2月の第9回党大会で、米朝関係の展望は全面的に米国の態度に懸かっていると明言した。
北朝鮮が米国に求めていることは核保有国としての地位の尊重と、敵視政策の撤回だ。正恩氏としては2018~19年のトランプ氏との会談で段階的な非核化の方針を示したにもかかわらず、米側が譲らず交渉が決裂したとの認識だ。
今回、北朝鮮に譲歩する考えはなく、会談が実現するかどうかは米国が一方的かつ大幅な譲歩に踏み込むのか、その具体的な提案を示すかどうかに懸かっている。米韓演習の縮小は「大幅」ではなく、北朝鮮が求めているものではない。
―想定されるトランプ氏の対応は。
レガシー(政治的遺産)欲しさから譲歩に前のめりになる可能性は十分にある。だからこそ北朝鮮はトランプ氏の名指し批判を避け、出方を見極めている。
非核化交渉を前提とすれば対話は実現しない。ただ、米国として非核化交渉を諦めるのが難しければ、それをゴールに持ってくることは可能だろう。かつては協議の入り口に非核化交渉があったが、まず終戦宣言や国交正常化を実現し、その後に事実上の軍備管理交渉を行う形とすれば北朝鮮も応じる可能性がある。
―考えられる会談場所は。
正恩氏は米国の譲歩の象徴として北朝鮮が好ましいと考えているだろう。米大統領の訪朝は正恩氏が国内に指導力を誇示するのに最適だ。
―北朝鮮が強気な理由は。
米国との交渉決裂後の7年で核ミサイル開発や通常兵器を含む軍事力の増強を図り、ロシアと同盟関係を結ぶにまで至った。ウクライナ侵攻に伴う戦争特需で経済は潤い、米国に制裁解除を求める必要性も低下した。さらに中国が北朝鮮の核保有を事実上容認せざるを得なくなり、非核化を表立って口にしなくなったことも一因だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕礒崎敦仁・慶応大教授
2026年08月24日 07時04分