サウジ、石油生産をAIで効率化=産業多角化を推進



【ダーラン(サウジアラビア東部)時事】世界有数の産油国であるサウジアラビアが石油生産の効率化を急いでいる。人工知能(AI)などの最先端技術を活用して生産コストを減らし、競争力を高める戦略だ。石油以外にも産業を多角化するため、天然ガスや石油化学、観光などの振興も推し進めている。

「(脱炭素化の進展で)非常に有利な立場にある」。国営石油会社サウジアラムコのアシュラフ・ガザウィ上級副社長は27日までに、東部ダーランの本社で時事通信などの取材に応じ、こうアピールした。

サウジの原油生産コストは他国と比べて4分の1程度で世界最安とされる。アラムコはさらに採掘コストを下げるため、AIやドローンを油田などで活用。環境規制が強まる中、ガザウィ氏によると、二酸化炭素(CO2)を回収し地中深くに貯留する技術「CCS」などへの投資も重視しているという。最新技術の導入で、効率的で環境に配慮した生産体制を確立する構えだ。

国際石油市場では、「シェール革命」を背景に、過去15年程度で米国産が一気にシェアを伸ばした。トランプ米大統領は「掘りまくれ」と増産を促しているが、需要が落ち込み相場が低迷した場合、高コストの米国産の国際競争力は低下するとの見方が市場では根強い。アラムコの最新技術への投資は「競争力を高めてシェアを伸ばす」(日本のエネルギー業界関係者)狙いもありそうだ。

一方、ガザウィ氏は取材で、アラムコが今後、石油より燃焼時のCO2排出量が少ないガスの生産を一段と拡大すると強調した。生産量を2030年までに21年比で8割増やすと説明。ガスがサウジの経済成長を支える「けん引役になる」と力を込めた。

サウジ政府はムハンマド皇太子の下で、石油に頼らない国造りを進めている。34年のサッカーワールドカップ(W杯)はサウジが開催する予定となっており、ダーラン近郊では巨大なスタジアムの建設工事が進んでいた。各地で巨大商業施設の整備も進む。サウジ駐在の韓国財閥系メーカーの幹部は「人口も増えており、魅力的な市場だ。リスクを取る価値はある」と打ち明けた。

〔写真説明〕サウジアラムコの本社=16日、ダーラン 〔写真説明〕サウジアラビアで建設中のサッカースタジアム=17日、ダーラン近郊

2025年12月28日 07時12分


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