
【ワシントン時事】5日公表された5月の米雇用統計では、景気動向を敏感に反映する非農業部門の就業者数が市場予想の2倍となった。労働市場が想定以上に底堅さを保つ一方、中東紛争に伴う原油高の長期化でインフレ懸念は増大。「雇用最大化」と「物価安定」を掲げる米連邦準備制度理事会(FRB)からは、利上げの必要性を示唆する高官発言が相次ぎ、金融緩和に慎重な「タカ派」色を鮮明にしている。
金融緩和に前向きな「ハト派」路線を期待するトランプ米大統領から指名を受けたウォーシュ新議長。今月16、17両日、就任後初の金融政策会合に臨む。原油高の影響で直近の米物価上昇率は3.8%と、FRB目標の2%を大幅に超過。拙速な緩和は景気を刺激し、インフレを助長しかねないため、利下げ論を凍結する可能性もある。
雇用統計はFRBが金融政策運営を判断する際に重視する指標の一つ。3月以降は労働市場の強さを示す内容が続き、5月は非農業部門就業者数が前月比17万2000人増と市場予想を大幅に上回った。今月11日に北米で開幕するサッカーワールドカップ(W杯)の需要を見込んだレジャー産業が7万人増と全体をけん引した。
金利先物を踏まえて政策変更の確率を算出するCMEグループのフェドウオッチでは5日、年内に1回以上の利上げが行われる確率が前日の約5割から一時、約7割まで上昇。FRBが緩和路線から引き締めに転じるとの見方が一段と強まった。
タカ派の代表格であるクリーブランド連邦準備銀行のハマック総裁は「根強い物価高の懸念がより大きい」と警戒感を示し、中東紛争に伴う物価高が長引けば、FRBが利上げにかじを切ることもあり得ると指摘した。ハト派として知られるウォラー理事も、将来の利上げを排除していない。
トランプ氏はこの日、5月の雇用統計の堅調さを評価しつつ「利下げを望んでいる」と表明した。株高や好景気を演出する狙いだが、要求に応じないパウエル前FRB議長に執拗(しつよう)に圧力をかけた強硬姿勢を封印し、判断はウォーシュ氏に任せるとも述べた。
〔写真説明〕米連邦準備制度理事会(FRB)のウォーシュ新議長=5月、ワシントン(EPA時事)
2026年06月06日 20時34分