先進7カ国(G7)と欧州連合(EU)、オーストラリアは3日までに、ウクライナ侵攻を続けるロシアへの追加制裁として検討してきたロシア産原油の取引価格の上限について、1バレル=60ドル(約8000円)とすることで合意した。日本は既に、ロシアからの輸入を大幅に削減していることなどから制裁に伴う影響は限定的となりそうだ。
今回の制裁は保険会社に対し、上限価格を超えて取引されたロシア産原油を運ぶ船舶へ保険提供を禁じることが柱。制裁は5日に発動する。世界中に原油を運ぶタンカーなどの船舶の保険の大半は欧米の金融機関が引き受けており、制裁に参加していない国にロシアと取引させないようにする狙いがある。
かつてロシア産原油は日本の年間の原油輸入量の4%程度を占めていた。しかし、岸田文雄首相がロシア産原油の段階的な禁輸を実施する方針を5月に表明して以降、同国からの輸入は急減。貿易統計によると、6、9、10月は輸入量がゼロとなっている。
また米国は既に、日本の要請に応じ、日本企業が参画する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の原油については、来年9月末まで制裁対象としない方針を決めている。
日本の液化天然ガス(LNG)調達にとって不可欠なサハリン2では、LNGの生産過程で、副産物として原油が産出される。この原油をスムーズに日本などに輸出できないと、サハリン2で主産物のLNG供給に悪影響が生じる恐れがあった。しかし、今回の追加制裁が発動した後も、サハリン2内の原油を日本が引き取ることができるために影響はなく、関係者は胸をなで下ろしている。
一方、原油の「脱ロシア」が進んだ結果、日本の中東への依存度(9月)は95.6%と、ロシアのウクライナ侵攻開始前(1月)の91.8%を上回る。日本が目指していた中東依存脱却に向けた戦略は修正を余儀なくされている。
〔写真説明〕ロシア・モスクワの石油精製施設(EPA時事)
2022年12月03日 19時41分