
東日本大震災で甚大な被害を受けた港町・宮城県気仙沼市が復興の先を見据え、ジェンダーギャップ解消に官民で取り組んでいる。性別に縛られず、誰もが暮らしやすく、働きやすい地域を目指す。その思いは三陸沿岸の周辺自治体にも広まりつつある。
火付け役は、20~70代の女性を中心とする市民グループ「気仙沼つばき会」。2009年、観光振興を目的とした集まりをきっかけに発足した。震災後の地元漁師を写した「漁師カレンダー」を10年間にわたり作成、販売するなどして地域のにぎわい回復に力を注いできた。
10年を区切りに、次に狙いを定めたのが、男女の格差解消だ。気仙沼の基幹産業は「男性社会」が色濃い水産業で、女性の平均賃金は安く、雇用や管理職も少ない。女性の市外流出の一因とされており、つばき会の千葉可奈子さん(40)は「このままではどんどん地域が小さくなる。現状を変える必要があると考えた」と話す。
23年夏、つばき会は菅原茂市長(68)、気仙沼商工会議所の菅原昭彦会頭(63)と共に、男女平等のまちづくりの先行自治体、兵庫県豊岡市を視察した。女性に選ばれる街を目指し、働きやすくやりがいもある企業づくりを重視する施策に触れた菅原市長は「われわれもやるっきゃないと思った」という。
24年、市と商工会議所は「気仙沼市ジェンダーギャップ解消プロジェクト(GGP)」を発足。市内の企業向けに、育児や介護と両立できる職場づくりに関するセミナーなどを重ねた。
当初、50社が目標だったGGPの賛同会員は、わずか1年半で約120社に上った。菅原会頭は「地元企業も、人口が減る中で生産性を下げないために、変わらざるを得ない。チャンスだ」と強調。商工会議所の高橋和江女性会長(66)も「震災で頂いた支援への恩返しとして、気仙沼が新しいことにチャレンジする」と意気込む。
影響は他の沿岸自治体にも広がる。岩手県沿岸9市町村を管轄する県沿岸広域振興局は、気仙沼を複数回視察。26年度から「さんりくジェンダーギャップ解消プロジェクト」を始める方針だ。担当者は、三陸沿岸の自治体の多くは水産が基幹産業で「類似性があり参考になる」と話す。
地元紙を通じ、男女格差解消を考える冊子を市内に一斉配布したり、連載記事としてGGPを取り上げてもらったりすることで、最近はGGPのイベントの参加者に男性も増えた。千葉さんは「関心を持つ人が少しずつ広がってきたと感じている」と笑顔を見せた。
〔写真説明〕ジェンダーギャップについて知ってもらうため作成した冊子を手にする気仙沼つばき会の千葉可奈子さん=2日、宮城県気仙沼市
〔写真説明〕宮城県気仙沼市ジェンダーギャップ解消プロジェクト(GGP)で開催されたシンポジウムに参加する地元企業=1月14日、宮城県気仙沼市
2026年03月11日 08時23分