
東日本大震災の被災者のメンタル面を支援する「心のケアセンター」が岐路に立っている。震災から15年近くがたち、国が運営に必要な交付金を年々、縮小しているためだ。相談件数が高止まりする岩手県や東京電力福島第1原発事故でいまだ2万人以上の避難者がいる福島県は、交付金の必要性を訴える。一方、宮城県は支援を平時の事業とするため、自治体への業務移管を進め、昨年末でセンターの活動を終了した。
心のケアセンターは、被災者の心身の問題や回復を支援するため、2011~12年に岩手、宮城、福島各県に設置された。自治体の精神保健福祉活動を補完する時限組織で、精神科医や保健師、臨床心理士らが健康調査や相談対応に当たる。うつ病やアルコール関連の疾患、自殺対策に取り組む関係者への研修などもしている。
長期的な支援に向け、いずれ平時の事業として県や市町村がセンターの業務を引き継ぐが、体制の整備状況はそれぞれ異なる。
昨年度、センターへの相談件数が1万1390件と過去2番目に多かった岩手県の担当者は「来年度以降、地域の相談支援体制を強化するが、いますぐの業務の移行は難しい」と強調する。
理由の一つが医療人材の不足だ。同県は地域の医師の偏りを示す指標が全国最下位。センターの医師を他県から派遣してもらっていたこともある。交付金が打ち切られると、センターの精神科医や保健師ら約30人に代わる人材を自治体で雇用する財源の確保も厳しい状況という。
福島県は、避難者の長期離散が続く上、避難指示が出た一部自治体で移住者が元の住民の数を上回るなどしており、「岩手、宮城と大きく事情が異なる」(担当者)という。
避難先から帰還後、以前と地域の状況が異なるためストレスや不安を抱える人が多い上、県外避難者への対応も必要で、「センターが担う役割は大きい」と力を込める。
一方、宮城県は21年度から心の問題の相談や支援者向け研修などの事業を自治体に移行させており、昨年12月にセンターの活動を終了した。県の担当者は、センターは時限的な組織だとした上で、「身近なところで相談できる環境を整えることが重要だ」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕「岩手県こころのケアセンター」の看板=6日、同県矢巾町
2026年03月09日 16時49分