
障害者施設「津久井やまゆり園」で45人が殺傷された事件は、元職員植松聖死刑囚(36)の障害者に対する身勝手な偏見や差別意識が背景にあったとされる。障害の有無などにかかわらず、誰もが共生できる社会の実現に向け、兵庫県たつの市の啓発グループ「ぴーす&ピース」は、知的・発達障害者が抱えるもどかしさや戸惑いを疑似体験し、理解してもらう活動を続けている。
「『少し』を絵に描いてください」。グループは福祉施設や学校などで行う体験会で、「曖昧な言葉では伝わらない」という知的・発達障害の特性を知ってもらおうと、表現が難しい課題を参加者に出す。日常生活で障害者に何かを伝える際は、具体的な表現を心掛けてほしいとの思いを込めたもので、参加者からは「曖昧な言葉では伝わらないのは、自分たちと同じ」といった驚きの声が上がるという。
こうした取り組みは2014年、「話を聞くだけでは障害者の気持ちが分からない」との思いから始まった。さまざまな疑似体験メニューを用意すると、「簡単で面白くて分かりやすい」と評判が広まった。毎年約30回、各地で体験会を開いており、やまゆり園事件以降は、開催を求める声も増えたという。
リーダーの矢野一隆さん(64)は、活動の狙いについて「楽しく学んでもらい、(知的・発達障害者に対し)興味を持ってもらうこと」と話す。その上で、「法整備も大事だけれど、地域の人たちの理解が共生社会の実現に最も大切」と訴えている。
〔写真説明〕知的・発達障害者の障害特性について学ぶ疑似体験会の参加者(ぴーす&ピース提供)
2026年07月25日 14時34分