
熊本地震でペットと一緒に被災した飼い主の中には、同伴避難が難しく世話に苦慮する人もいる。熊本県氷川町の上田道代さん(75)もその一人だ。自宅に置いてきた愛猫は衰弱してしまった。ただ預け先の動物病院で回復し、上田さんは「前向きになれた」と笑顔を見せる。こうした中、ペットの一時預かりを支援する動きも出ている。
上田さんの自宅は地震で全壊した。被災直後、メス猫「ひな」の無事は確認できたが、その後姿を消した。自宅前にえさを置きながら様子を見守り、2日後にようやく再会できた。
ただ、避難先には連れて行けず、自宅前でえさを与え続けるしかなかった。自宅に帰るたびに、がれきの隙間からひょっこり出てきてくれたが、日に日にやせ細った。
上田さんには苦い記憶がある。2016年の熊本地震だ。当時は別の猫を飼っていたが、この猫を半壊した自宅に残して避難生活を続けたところ、5カ月後に死んだ。「強いストレスが原因かも」と今も悔やむ。
「10年前は自分で精いっぱいだったが、今回は絶対に助けたい」。上田さんは必死に受け入れ先を探した。今月3日に熊本市の動物病院に預けると、ひなは徐々に回復。「本当に良かった。感謝しかない」。今は一日でも早く、ひなと一緒に暮らせる環境を整えたいと前を向く。
上田さんと同様に、同伴避難が困難な被災者は多いとみられる。熊本県獣医師会(熊本市)は4日、ペットの救護や飼い主を支援するための窓口として「ペット救護本部」を設置した。県内8カ所の動物病院で受け入れを開始し、その一つがひなの預け先の「ビッグベア動物病院」だった。
同院の長尾孝之院長は「ペットを安全な場所に預けることで、自分の生活基盤を整えることに注力し、復興を早めることができる」と語り、利用を呼び掛けた。
〔写真説明〕動物病院の長尾孝之院長と預けられたメス猫「ひな」=6日、熊本市東区
〔写真説明〕熊本地震で全壊した自宅を見詰める上田道代さん=7日、熊本県氷川町
2026年08月14日 14時32分