
2024年元日に発生した能登半島地震で、石川県輪島市のビルが倒壊したのは、国が自治体への適切な指導監督を怠ったことなどが原因だとして、隣接する自宅兼店舗が押しつぶされ、妻子を亡くした男性が5日、国とビル所有者の「五島屋」(輪島市)に計約2億1500万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。
男性は、当時ビルの隣で居酒屋を経営していた楠健二さん(58)。倒壊したのは1975年に竣工(しゅんこう)した鉄筋コンクリート造りで7階建てのビルで、震度7の揺れを受け、根元から横倒しとなり、楠さんの妻由香利さん=当時(48)=と長女珠蘭さん=同(19)=が死亡した。
訴状で楠さん側は、国は改修コストを優先し、耐震診断の義務付け対象を巨大ビルに限定したと指摘。倒壊したビルは対象外だった上、ビルを支える「くい」の耐性診断も義務付けられておらず、国が自治体を適切に指導していれば、ビルを補強したり使用中止にしたりできたと訴えた。
所有者の責任については、倒壊したビルにはくいと基礎をつなぐ鉄筋が存在しないなど、「通常備えるべき安全性を欠いていたことは明らかだ」と主張した。
国土交通省の有識者会議は昨年12月、ビル倒壊の原因に関し、柱の配置が片寄っていたため特定のくいに負担が集中した上、現行の安全基準以前に造られたくいの強度が低く、地盤も軟弱だったなどとする最終報告書をまとめた。くいの破損で建物が倒壊したのは、国内初のケースだった。
提訴を受け、国やビル所有者は「コメントできない」などとした。
〔写真説明〕能登半島地震のビル倒壊を巡り、国とビル所有者に損害賠償を求める訴訟を起こした原告の楠健二さん=5日午後、東京都千代田区
〔写真説明〕能登半島地震で倒壊したビル=2024年1月、石川県輪島市
2026年11月05日 18時42分