幾多の挫折を乗り越え、夢舞台に立った。カーリング日本女子でフォルティウスのスキップ吉村紗也香(34)は、5度目の挑戦で五輪初出場。2023年12月に第1子の長男を出産し、精神的な強さも備わった。待ち焦がれたリンクで勝負を決める一投を投じている。
日本のカーリングの聖地として知られる北海道常呂町(現北見市)出身。小学4年で競技を始めた。常呂高で出場した10年バンクーバー五輪代表決定戦で敗れて以来、五輪は届きそうで届かない憧れの場所だった。あと一歩だった前回の北京五輪はテレビで見詰め、「本当につらかった」と振り返る。
かつての吉村は不安な気持ちを一人で抱え込んでいた。確かな実力がありながら、大一番で発揮できない。精神面の課題を克服する転機が20年日本選手権。中部電力に大量失点で同じ負け方を繰り返し、「自分を変えなければ、五輪に一生届かない」と痛感した。
個人でメンタルコーチと契約。仲間に心を開くようになった。「緊張している」。こう漏らすと、メンバーが支えてくれた。弱さを共有することで心は軽くなり、絆は深まった。昨年9月の五輪最終予選代表決定戦は2連敗スタート。「悔しい」と仲間の前で涙を流して感情をはき出し、崖っぷちから底力を示した。
産休中は1シーズン、氷から離れた。出産の約2カ月後からトレーニングや氷上練習を再開。「全く別の体だった。ランニングは10分ももたなかった」という。2人の子供を育てながら競技していた船山弓枝コーチの助言を受け、「量より質」を重視。体力や筋力を少しずつ戻していった。
「一番の宝物」と話す子供と遠征で離れる時間は寂しさもあるが、家族から送られてくる写真や動画を見て心を癒やす。「子供は大きな存在で原動力。離れているから自分も頑張らなきゃと思う。精神的にも強くなった」。夢は世界一のスキップ。輝くものを日本へ持ち帰る覚悟だ。
【時事通信社】
2026年02月14日 07時14分
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