日本相撲協会の暴力禁止規定によれば、地位の高い者ほど、その行為への処分が重くなる。暴力根絶を目指す中、元横綱照ノ富士の伊勢ケ浜親方が、弟子の幕内伯乃富士の不適切行為を戒めるために手を出した。平年寄への降格などの処分を科された一方、師匠の立場は保ったまま。これまでの例に照らせば、極めて甘い処分と言える。
2020年、中川親方(元幕内旭里)の長期にわたる弟子への暴力行為が発覚して中川部屋は閉鎖に。24年には、元横綱白鵬が師匠の宮城野部屋で所属力士の暴力事案があって部屋は当面、閉鎖となり、親方と弟子らは伊勢ケ浜部屋に転籍した。
暴力は決して許されるものではない。悪質とみなされれば、懲戒解雇や、師匠の座を剥奪される可能性もあった。
藤島広報部長(元大関武双山)は過去の処分例との違いについて、伊勢ケ浜親方が自ら相撲協会に申告した点を挙げた。さらに暴力が「一過性というのが中川部屋とは違う」とも。泥酔し、以前にも問題を起こした伯乃富士を注意した際に振るった暴力は、同親方が真摯(しんし)に反省していることもあって斟酌(しんしゃく)された。
今回の処分内容が「甘過ぎる」という協会内の声はある。だが、現役時代、元照ノ富士は両膝のけがなど満身創痍(そうい)の中、一人横綱として角界の屋台骨を支えた。3月の春場所番付で最多の31人の力士を抱える大所帯。他の部屋への転籍などは現実的ではなく、伊勢ケ浜親方の熱心な指導は弟子からの信頼も厚い。名誉挽回のため、周囲からの期待に懸命に応えることが求められる。
【時事通信社】
2026年04月10日 07時04分
sports