
【ロサンゼルス時事】米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手と公私をともにした元通訳、水原一平受刑者による違法賭博事件を巡り、発覚直前の水原受刑者に接触した記者がいる。米スポーツ専門局ESPNのティシャ・トンプソンさん。時事通信のインタビューに応じ、当時の状況や今も残る疑問を語った。
◇大谷選手についたうそ
「ああ、これは大谷翔平の英語の声だ」。トンプソン記者は、水原氏がドジャースから解雇される直前の米時間2024年3月19日、水原氏への電話インタビューにこぎ着けた。電話口の声は聞き覚えのある通訳のものだとすぐ分かった。事件を追う過程で当初は大谷選手本人への取材を求めたが、代理として応じたのが水原氏。韓国で開催された大リーグ開幕戦の試合前で、90分にわたった。
序盤は口数が少なかったが、大谷選手の生活水準についていけなかったと語り始めると「感情を一気に吐き出した」。借金は少なくとも450万ドル(約7億円)と認めたが、トンプソン記者には1600万ドル(約25億円)以上との情報が入っていた。「何百万ドルもの違いを分からないはずがあるのか」と疑念を抱いた。
それから約16時間後に2度目の電話。水原氏は1度目の際に、大谷選手が借金返済を引き受けて送金を手伝ったと説明していたが、それを一変させた。近くにいた何者かが止めようとする声が聞こえ、通話が切れると察した。「大谷にうそをついたのか」の問いに「イエス」。水原氏が弁護士を必要としていることを知り、「彼が深刻な事態に陥っていると分かった」。以降、電話がつながることはなかった。
◇二面性が印象に
水原氏は銀行詐欺罪などで禁錮4年9月の有罪判決を宣告され、昨年6月に収監された。「あの16時間の間に何があったのか。誰に取材を受けるように言われたのか。なぜ応じ、何が起きると思っていたのか。何かを約束されていたのか」とトンプソン記者。今も疑問は尽きない。
少年時代の同級生を訪ね、学歴詐称や問題行動を指摘する証言が集まった。「上司に言われるまま身代わりになった人物という評判ではなかった」。一方、日米の冗談や表現を巧みに訳す能力に、通訳としては「誰にも劣らないほど優秀だった」と認める。その二面性が印象に残ったという。
さらに「本当に取材したいのは大谷翔平」と強調する。水原氏を友人と見ていたのか、単なる従業員のような関係性だったのか。「信頼して秘密まで話していた相手なら、本当につらい裏切りだ」とおもんぱかる。
それでも大谷選手は24年に史上初のシーズン50本塁打、50盗塁の「50―50」を達成し、ワールドシリーズ制覇の原動力になった。「これほど大きな騒動を乗り越えた選手は他に思い浮かばない。『疑うなら、自分の力を見せてやる』と言うような姿だった。驚くべきことだ」。いつか、数々の謎が解き明かされることを願っている。
【時事通信社】
〔写真説明〕オンラインで取材に応じる米スポーツ専門局ESPNのティシャ・トンプソン記者=10日
〔写真説明〕ドジャースの大谷翔平選手の通訳を務めていた当時の水原一平氏(左)=2024年3月、ソウル(AFP時事)
〔写真説明〕裁判を終えて報道陣に囲まれる水原一平氏(中央)=2025年2月、米カリフォルニア州サンタアナ(AFP時事)
2026年08月21日 07時41分