地震や水害などの災害発生時にインターネット上で出回る偽情報に対抗しようと、民間企業や大学などが技術開発を急いでいる。投稿内容が正しいかの判定に加え、拡散に伴う社会的影響などを分析。生成AI(人工知能)の普及で大規模、巧妙化する「うそ」防止の一手となるか注目される。
富士通やNEC、東京大など九つの企業や学術機関は、偽情報の検知から情報収集、分析、評価まで統合して行う基盤づくりに向け、研究開発を始めた。文章や画像といった投稿内容に加え、投稿者や送信場所などの周辺情報も集め、生成AIを活用して矛盾の有無や社会への影響度を検証。2026年3月末までのシステム開発を目指す。
7月には能登半島地震の被災者を装い、うその文章をX(旧ツイッター)に投稿したとして、埼玉県の会社員が偽計業務妨害容疑で逮捕された。災害時の偽情報は、救助要請をかたった詐欺や政府・行政批判など多種多様だ。AIが作り出す偽の動画や画像「ディープフェイク」も精巧さを増し、システム開発に挑む国立情報学研究所の山岸順一教授は「人間には見抜けない状況になりつつある」と警鐘を鳴らす。
偽情報の拡大を示唆するデータもある。情報通信研究機構(NICT)が、能登地震の発生後24時間以内に日本語でXに書き込まれた投稿約1万7000件を抽出、解析したところ、救助要請に関する1091件のうち1割に当たる104件が偽情報と推定された。16年の熊本地震では1件だった。
富士通データ&セキュリティ研究所の山本大リサーチディレクターは「自然災害を巡る偽情報は人命に関わるケースがあり、対応の緊急性が高い。IT技術で立ち向かいたい」と意気込んでいる。
【時事通信社】
2024年12月30日 07時17分
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