ロシアのウクライナ侵攻を巡り、米ロ首脳が電話会談でエネルギー施設の攻撃停止で合意してから18日で1カ月。しかし、戦闘は収まっていない。仲介役のトランプ米政権が和平への入り口と位置付ける「部分停戦」は、有名無実化している。
エネルギー施設の攻撃停止に関しては、ウクライナのゼレンスキー大統領も3月19日のトランプ大統領との電話会談で合意した。期間は同18日から30日間で、延長可能とされる。
過去1カ月間、ウクライナで市民の犠牲が相次いだ。報道によると、東部ドニプロペトロウスク州では4月4日のロシア軍のミサイル攻撃で20人が死亡。同13日には北東部スムイ州にミサイルが撃ち込まれ、35人の死者が出た。
ゼレンスキー氏はこれらの攻撃について、ロシアのプーチン大統領に停戦の意思がない証拠だと強く非難。不満はロシアに融和姿勢を見せつつ仲介を図るトランプ政権にも向いている。
米国はロシアに強い圧力をかけるどころか、ウィトコフ中東担当特使が11日に訪ロしてプーチン氏と会談。ウィトコフ氏は訪ロ後、米メディアに対し、和平はウクライナが「五つの領土」を巡って譲歩することで達成できると述べた。五つはロシアが占領するクリミア半島と東・南部4州を指すとみられ、ゼレンスキー氏は15日の記者会見で「領土問題を語れるのはウクライナ国民だけだ」と頭越しの交渉をけん制した。
ウクライナが態度を硬化させれば、停戦交渉にブレーキがかかりかねない。トランプ氏が停戦の目標時期に設定したとされる20日のキリスト教の復活祭(イースター)が迫っているが、米ロ首脳の対面会談も実現していない。
エネルギー施設の攻撃停止とは別に、米ロとウクライナの3カ国は3月25日、黒海の航行の安全確保でも合意したと発表した。ただ、プーチン政権は対ロ制裁の解除を条件としている。いずれの合意も履行が見通せず、停戦実現には程遠い状況だ。
【時事通信社】
〔写真説明〕ウクライナのゼレンスキー大統領=16日、キーウ(AFP時事)
2025年04月18日 07時06分