【カイロ時事】イスラエルがパレスチナ自治区ガザでイスラム組織ハマスへの大規模攻撃を再開して、18日で1カ月。事実上崩壊した停戦合意の再建に向けた交渉は、進展が見られない。ガザでは物資搬入が止まったままで、人道状況が悪化。住民は終わりの見えない絶望に打ちひしがれている。
◇3割が「緩衝地帯」に
イスラエル軍によると、3月18日に大規模攻撃を再開後、これまでに約1200カ所の標的を空爆し、多数のハマス戦闘員を殺害した。支配地も拡大し、ガザの約30%の地域を一方的に「緩衝地帯」へ組み込んだ。
停戦交渉の柱は、イスラエル軍のガザ撤退と、ハマスが拘束する人質の解放だ。だが、イスラエルのカッツ国防相は今月16日、「奪取した地域から撤退はしない」と主張。部隊の恒久的駐留の方針も示した。
イスラエルのネタニヤフ首相は、交渉について「砲火の下でのみ行う」と強調してきた。緩衝地帯への駐留継続も軍事的圧力の一環とみられるが、撤退を強く求めてきたハマスが態度を軟化させるかは未知数だ。
さらに、イスラエルはハマスに提示した新たな停戦案で、武装解除を要求したとされる。ハマス側は「越えてはならない一線だ」と反発。交渉が暗礁に乗り上げれば、イスラエルが一段と攻勢を強める可能性がある。
◇「倉庫に何もない」
イスラエルは3月2日以降、ハマスへの圧力強化を名目にガザへの物資搬入を禁止。現地では食料や燃料の入手が極端に難しくなり、人道状況が悪化の一途をたどっている。
人道支援の中核を担う国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の現地職員は今月16日、時事通信の取材に「倉庫には何も残っていない」と明かした。数十万人が飢餓に見舞われる恐れがあると指摘され、グテレス国連事務総長は「ガザは殺りくの場と化している」と危機感をあらわにする。
「もう死にたい」。南部ハンユニスの教師ハレド・アメルさん(38)は、電話取材にそう漏らした。食料を得ようと市場に行ったが、どの店も空っぽで、4人の子供の元に手ぶらで帰った。「食べることも、息をすることも否定されているようだ」。恒久停戦が訪れないと悲観し、「子供のためにガザから出たい」とも語った。
ガザでは停戦を求める抗議活動がたびたび発生し、ハマスを批判する声も上がっている。ハマス幹部のガジ・ハマド氏は取材に「人々は壊滅的な状況に置かれている」と指摘。住民の怒りに理解を示しながらも、圧力に屈しない決意を強調する。「責任は占領者(イスラエル)にある。占領が終わるまで戦い続ける」。
【時事通信社】
〔写真説明〕パレスチナ自治区ガザ中部のヌセイラト難民キャンプで、食料を求めて集まる子どもたち=3日(AFP時事)
2025年04月18日 07時07分