遺族「実行犯に処罰を」=戦争は望まず―インド26人死亡テロ1カ月



【コルカタ(インド)時事】インドとパキスタンの係争地カシミール地方のインド側で、観光客ら26人が死亡したテロから22日で1カ月。インド政府は事件の背後にパキスタン当局がいると断定。同国領内を攻撃し、核兵器を保有する両国の緊張が一時、高まった。テロ犠牲者遺族は「戦争は望んでいない」としつつ、「一刻も早くテロリストを捕まえ、処罰してほしい」と訴えている。

東部コルカタ在住の主婦サバリ・グハさん(51)は4月22日、カシミールの観光地パハルガムで政府職員の夫サミールさん(54)を突然失った。高校卒業試験を終えた娘(17)と3人で休暇を過ごすため訪れていた。到着して15~20分たったころ、発砲音が聞こえた。地元商店主はサルを追い払うためだろうと話したが、銃声はやまなかった。

異変に気付いた周囲の人に促され地面に伏せると、軍服を着たマスク姿の男が近づいてきた。「カリマ(イスラム教の信仰告白の言葉)を唱えろ」。ヒンズー教徒のサミールさんと近くにいた別の男性は唱えられず、その場で射殺された。サバリさんや娘は逃げるしかなかったという。

「15分前に一緒に写真を撮った人を失うなんて想像もしていなかった」と声を震わせた。「(夫は)とても親切で謙虚だった」といい、勤務先では部下らを叱責することなく、自ら率先して働き模範を示していたと話す。複数人とされる実行犯は捕まっていない。

「目を閉じるたび事件が浮かぶ。何度も同じ光景を見ている気がする」。働き手を失ったことで住宅ローン支払いなど家計の問題に直面。行政の支援を求めた。父親の死を目の当たりにした娘のショックは大きく、カウンセリングを受けている。

インド軍は7日、報復としてパキスタン国内9カ所を空爆。テロ実行組織と関係するイスラム過激派の拠点も破壊したと主張した。一方、パキスタン側は民間施設が攻撃され、死傷者が出たと反論した。

印パは10日に停戦で合意した。サバリさんは「両国がよく検討した結果だろう。でも、事件の背後にいる人物は捕らえられなければならない」と語気を強めた。

【時事通信社】 〔写真説明〕インド側カシミールの観光地パハルガムで起きたテロで夫サミールさん(写真)を失った主婦サバリ・グハさん=18日、インド東部コルカタ

2025年05月22日 12時32分


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