【ウエストミフリン(米ペンシルベニア州)時事】トランプ米大統領は30日、東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊にある米鉄鋼大手USスチールの工場で演説し、日本製鉄によるUSスチール買収計画に関し、「われわれは偉大なパートナーを持つ」と歓迎した。また、国内鉄鋼業などの一段の振興を狙い、鉄鋼・アルミニウムの輸入に課す追加関税を現行の2倍となる50%に引き上げる方針を表明した。
トランプ氏は買収の枠組みなど計画の詳細には踏み込まなかった。演説後、記者団に対し、計画の最終案をまだ確認していないと言明。「日鉄との最終的なディール(取引)を承認する必要がある」と述べた。
日鉄による買収計画は、バイデン前大統領が国家安全保障上の懸念を理由に中止を命じた。トランプ氏は大統領の諮問機関である対米外国投資委員会(CFIUS)に再審査を指示。CFIUSがトランプ氏に提出した勧告書を踏まえ、6月5日までに最終的な結論を出す見通しだ。
トランプ氏は演説で、強い鉄鋼業は「国家安保の問題だ」と話した。SNSへの投稿では、鉄鋼・アルミへの50%の関税を6月4日に発動する意向を明らかにした。
記者団に対しては「関税が競争力を一層高め、偉大な取引につながった」と指摘。高関税を武器に、製造業の国内回帰を後押しするやり方に自信を示した。ただ、トランプ関税の影響を巡る不透明感が一段と高まり、米景気を圧迫し、インフレを再燃させる恐れもある。
トランプ氏は演説で、日鉄のUSスチールに対する投資額が140億ドル(約2兆円)に上るとし、「米鉄鋼業に対するものでは史上最大だ」と強調。USスチールが本社を置くピッツバーグは「間もなく『鉄の町』として再び世界中で尊敬されるだろう」と語った。
一方で、USスチールが「米企業にとどまる」とも明言。「最も重要なのはUSスチールが米国によってコントロールされ続けることだ。そうでなければ、私は取引をしなかった」と述べた。
また、日鉄の買収提案を何度も断り続けたが、「そのたびに取引は労働者にとってますます良くなった」と主張。自らの積極関与が巨額投資に結び付いたとして、成果をアピールした。
演説には日鉄の森高弘副会長も出席。トランプ氏が「これは彼が長年温めてきた事業だ。ありがとう、タカヒロ」と紹介する一幕もあった。
【時事通信社】
〔写真説明〕30日、米ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊のUSスチール工場で演説するトランプ大統領(AFP時事)
2025年05月31日 19時26分