戦後80年に合わせ、1泊2日の日程で沖縄県を訪れた天皇、皇后両陛下と長女愛子さまは4日、糸満市の南部戦跡に最初に足を運んで沖縄戦犠牲者を慰霊し、戦争体験者や遺族らと面会された。戦争を知る世代が高齢となる中、記憶継承を願う両陛下の意向で、初めて沖縄を訪れた愛子さまは、90代の戦争体験者の話に耳を傾けた後、「平和の大切さを感じました」と述べた。
ご一家がまず向かったのは、沖縄戦犠牲者の遺骨が納められた国立沖縄戦没者墓苑。「平和の礎(いしじ)」も視察後、県平和祈念資料館を訪れ、戦争体験者や遺族、語り部計10人との懇談に臨んだ。
沖縄戦で家族10人のうち、父や兄、祖父母ら8人を亡くした玉木利枝子さん(91)=那覇市=は、砲弾の中を一人で逃げた経験や、父が軍医だったことを話した。ご一家は「大変なことを」といたわりながら話を聞いていたといい、面会後の取材に「天皇家には複雑な感情もあるが、勉強しながら知っていこうという心掛けを感じた」と語った。
家族5人を亡くした県遺族連合会顧問の照屋苗子さん(89)=同=は、ご一家の前で自身の経験を明かし、「戦争は人間が人間ではなくなる。地獄です」などと声を詰まらせながら訴えた。皇后さまは「おつらい話を」と寄り添って、照屋さんの手を握った。
学芸員として、戦争体験の聞き取りなどに取り組んできた綿貫円さん(36)=石垣市=は「語り部」として、石垣島では戦時中にマラリアなどで多くの犠牲者が出たことを伝えてきた。活動を聞いた愛子さまは「直接話を聞くことは大事なんですね」と感想を述べていたという。
【時事通信社】
〔写真説明〕沖縄県平和祈念資料館を視察し、戦争体験者と言葉を交わされる天皇、皇后両陛下と長女愛子さま=4日、糸満市摩文仁(代表撮影)
2025年06月04日 21時54分