【ワシントン時事】トランプ米大統領と実業家イーロン・マスク氏が5日、激しいののしり合いを演じた。昨年の大統領選から続いた蜜月は一転し、正面衝突に発展。大口献金者であり、X(旧ツイッター)に2億人超のフォロワーを抱える世界的大富豪との対立は、トランプ政権にとって政治的リスクとなりかねない。
◇減税案で決裂
「(トランプ氏は)恩知らず」「イーロンは正気を失った」。衆人環視の中、2人はそれぞれのSNS上で応酬を繰り広げた。
決裂のきっかけは、マスク氏がここ数日、トランプ氏の看板政策を盛り込んだ大型減税関連法案を「廃案にしろ」などと批判を強めたことだ。腹に据えかねたトランプ氏は5日、「イーロンには大いに失望した」と記者団に述べ、「決別」を宣言した。
その直後、マスク氏は「私がいなければトランプは選挙に負けていた」と怒りを爆発させた。マスク氏は昨年の大統領選で、トランプ氏と共和党側に3億ドル(約430億円)近くを献金した。
トランプ氏は即座に応戦し、「何十億ドルも予算を節約する最も簡単な方法は、イーロンの(事業に対する)政府補助や契約を打ち切ることだ」と挑発。宇宙企業スペースXを率いるマスク氏も、米政府の宇宙関連事業への協力を「即座に中止する」とやり返した。
攻撃はエスカレートし、マスク氏は少女らへの性的虐待事件で起訴されたジェフリー・エプスタイン元被告(拘束中に死亡)の顧客リストに、トランプ氏が含まれていると示唆。「トランプは弾劾されるべきだ」とつづったXユーザーの投稿に「そうだ」と返信したり、新党の必要性に言及したりした。
◇「風よけ」去る
大統領選への貢献でトランプ氏に接近したマスク氏は、「政府効率化省(DOGE)」トップとして政権入り。政権が強引に進める連邦政府の歳出削減で批判の矢面に立ち、トランプ氏の「風よけ」にもなってきたが、先月公職を離れた。
財政規律を重視する財政保守派のほか、トランプ氏の支持者にも一定の影響力を持つマスク氏を敵に回せば、今後の政権運営に支障を来しかねない。トランプ氏は「歯向かうのは構わないが、何カ月も前にすべきだった」と投稿したのを最後に、いったん矛を収めた。
【時事通信社】
〔写真説明〕トランプ米大統領(右)と実業家イーロン・マスク氏(AFP時事)
2025年06月06日 20時31分