トランプ氏、G7軽視鮮明=中東情勢対応で途中帰国―対ロシアでも亀裂残す



【カナナスキス時事】トランプ米大統領は16日、イスラエルとイランの衝突に対応するとして、カナダでの先進7カ国首脳会議(G7サミット)を途中で切り上げて帰国した。各国首脳は理解を示したものの、対ロシアなどを巡る不一致は残ったまま。1975年の発足以来、国際社会の重要な課題に対応してきたG7の役割を軽んじるトランプ氏の姿勢が鮮明となった。

トランプ氏はこの日朝、首脳会議の開幕前から攻撃的だった。

議長国カナダのカーニー首相との会談冒頭、笑顔もなく「主要8カ国(G8)から、オバマ(元米大統領)とトルドー(カナダ前首相)がロシアを排除したことは間違いだった」と切り出した。ロシア抜きでウクライナ情勢を巡る討議に「多くの時間を費やす」のは無駄だとも主張した。

G7は近年、ロシアの侵攻に対抗するウクライナへの支援を主導、中国にも強硬姿勢を取ってきた。トランプ氏は記者団に、G7に中国を加えることは「悪い考えではない」とも語った。

今回のG7サミットでは、交戦が激化しているイスラエルとイランに自制を促すメッセージを打ち出せるかどうかが焦点だった。当初、欧州当局者が中心となって作成した共同声明案への署名をトランプ氏が見送ると伝えられた。最終的に発表された声明はイスラエル支持を色濃く打ち出したもので、平和に向けたG7の具体的な行動は何も言及されなかった。

トランプ氏はこれに先立ち、自身のSNSで「イランは核兵器を持つことはできない。誰もが直ちにテヘランから避難すべきだ」と警告。米国との交渉でイランが核開発の放棄に同意するよう改めて迫った。2015年に成立したイラン核合意には、国連安保理常任理事国とドイツ、欧州連合(EU)が参加したが、現在行われている米国とイランの交渉に欧州の関与はない。

トランプ氏は16日、英独首脳らと相次いで会談。ウクライナとの停戦に応じないロシアへの制裁強化を模索する欧州に対し、「制裁はそんな簡単なものではない」と反論して亀裂を浮き彫りにしている。

G7サミットの議長を務めるカーニー氏は、開幕に際し「私たちは歴史の転換点の一つに立っている。世界が立ち直る力の源泉は『協力』にある」と呼び掛けた。トランプ氏の言動や振る舞いは、G7のそうした世界観を大きく揺るがしているかのようだ。

【時事通信社】 〔写真説明〕16日、カナダ西部アルバータ州カルガリー空港で、大統領専用機に乗り込むトランプ米大統領(ロイター時事) 〔写真説明〕トランプ米大統領(左)とスターマー英首相=16日、カナダ西部カナナスキス(AFP時事)

2025年06月18日 12時37分


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