第2次世界大戦の戦没者の遺族らが海外の戦地で慰霊し、現地の人たちと交流する「慰霊友好親善事業」が今年度で終了する。平均年齢80歳を超す参加者の高齢化に伴い、継続が困難と判断されたためだ。「残念」との声もあり、主催する日本遺族会(東京都千代田区)は「今後も新たな形で交流を続けていきたい」と模索を続けている。
事業は1991年度に国の補助を受けて始まり、太平洋諸島や中国、フィリピンなどの激戦地で戦没者の慰霊と現地交流を行ってきた。今年4月1日までに約450回、延べ約1万6000人が参加している。
ただ、高齢化を背景に、参加者は減少傾向にある。2005年度の911人をピークに、新型コロナウイルス流行による中止を挟み、23年度は248人まで減った。
参加者減を受け、日本遺族会は25年度で事業を終了することを決めた。事業の一環として船上で行う「洋上慰霊」も終了となり、最後の今年度は、6月に台湾海峡やフィリピン沖などを巡って戦没者の冥福を祈った。11月以降にもフィリピンを訪れる予定という。
事業終了に、遺族からは落胆の声が上がった。サイパンで戦没した父を慰霊するために2回参加したことがある土棚尚子さん(84)=東京都大田区=は「最後なのはとても残念」と話す。「戦没地に行くことで父を身近に感じることができた。せめて孫の代までは続けてほしかった」と語った。
今後について、同会会長の水落敏栄元参院議員(82)は同会を通じ、「慰霊に尽力した外国人を招待し、国内の慰霊施設を視察してもらうことなどを予定している」とコメントした。同会担当者も「新たな形で交流事業を続けていきたい」と話している。
【時事通信社】
〔写真説明〕日本遺族会主催の洋上慰霊で戦没者の冥福を祈る遺族ら=6月8日、フィリピン・ルソン島沖(同会提供)
2025年07月31日 07時06分