自民党は2日にも参院選総括を取りまとめ、総裁選前倒しの是非を問う党内手続きをスタートさせる方針だ。石破茂首相(総裁)サイドは衆院解散などをちらつかせ、反石破派を抑え込もうと躍起だが、かえって反発をあおった面も否めない。命運を分ける党所属国会議員と都道府県連の「過半数」を巡り、攻防が本格化する見通しだ。
「国民の世論と自民党内の世論が乖離(かいり)しているとすれば非常に怖い」。森山裕幹事長は8月30日、鹿児島県鹿屋市の会合でこう語り、首相続投への理解が世論調査で広がっているとして党内の「石破降ろし」をけん制した。
総裁選挙管理委員会は27日、総裁選前倒しを要求する場合は書面の提出を求め、提出した議員名と都道府県連名を公表することを決定。提出日(期限)は9月8日とする方向で調整している。参院選総括が2日の両院議員総会で了承されれば、直ちに党内に通知する方針だ。
議員名公表を巡り、選管内には「踏み絵を迫ることになる」と慎重論があった。最後は逢沢一郎委員長が裁定する形となった。逢沢氏は「公表した方が党への信頼感が増す」と記者団に説明したが、逢沢氏は森山氏と協議を重ねており、前倒し要求の心理的ハードルを狙ったとの見方は強い。
首相側は別の形でも圧力を強める。首相周辺は「総裁選前倒しを求めるなら副大臣・政務官を辞めるべきだ」と指摘。首相は8月24日に小泉純一郎元首相と会食し、郵政民営化反対の候補に「刺客候補」をぶつけた2005年の衆院選について話を聞いた。党内では「展開次第では同じ対応を取るという脅しではないか」とささやかれる。
しかし、こうした首相側の動きは逆に石破降ろしを増幅させている。神田潤一法務政務官は28日、政務官を辞任してでも総裁選前倒しを求める考えを自身のX(旧ツイッター)で示唆。29日には小林史明環境副大臣も「副大臣を辞して手続きを行いたい」と書き込んだ。斎藤洋明財務副大臣も31日、前倒し賛成を表明し「辞任を求められれば辞任する」と投稿した。
笹川博義農林水産副大臣は29日、旧茂木派の中堅・若手約10人で会合を開き、総裁選前倒しを求める方針で一致。首相側の思惑は裏目に出た形で、「こぞって辞表を出されれば首相への打撃は大きい」(参院中堅)との見方も出ている。
自民執行部は29日の党会合で総括案を示したが、首相らの責任に触れていないと異論が上がった。9月2日の両院議員総会に修正案を提示し、了承を得たい考えだが、責任論への言及が十分でなければ石破降ろしを加速させる可能性がある。総括後に責任を明らかにするとしている森山氏らの去就も党内の判断を左右する変数だ。
2日以降、各都道府県連でも態度決定に向けた議論が本格化する。地方組織の動向も党所属議員の判断に影響するとみられる。党所属議員と都道府県連の過半数は172。党内では「過半数には届かない」「雪崩を打つ可能性もある」と見方が交錯している。
【時事通信社】
〔写真説明〕首相官邸に入る石破茂首相=8月29日、東京・永田町
2025年09月01日 07時04分