習政権、「戦勝80年」で反日宣伝強化=在留邦人、高まるリスク―深セン男児刺殺1年



【北京時事】中国・深センで日本人男児が刺殺された事件から1年。事件は詳細が明らかにされないまま幕引きが図られたが、背景には反日感情があるとの見方は根強い。習近平政権は「戦勝80年」で反日宣伝を強めており、在留邦人が標的となるリスクは高まる一方だ。

事件後、日本政府は中国本土にある11の日本人学校の安全対策を強化。送迎バスには警備員が同乗するようになった。日本大使館は、子連れでの外出時は特に周囲に注意するよう繰り返し呼び掛け、日系企業では、家族帯同での赴任を避ける動きが広がっている。

在留邦人が緊張を強いられる一方、習政権は今年を「抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利80周年」と位置付け、「日本による侵略行為」を宣伝するキャンペーンを強化している。

北京市郊外の盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館では、7月から企画展を開催。旧日本軍の戦争中の行為に焦点を当てたコーナーでは、見学者から「学校でも習ったが日本はやはり良くない」(中国人の小3男児)といった感想が聞かれた。

戦争関連の映画公開も相次ぐ。南京事件を題材にした作品「南京写真館」は、今夏の映画の中で最大のヒットを記録。感想を書き込むサイトには「国辱を忘れるな」といった投稿があふれる。18日には、旧日本軍の関東軍防疫給水部(731部隊)を描いた作品「731」も封切りとなった。

こうした風潮を反映し、日中の往来も一部中止に追い込まれている。日本政府主催で戦没者遺族らが8月中旬に予定していた中国東北部訪問は、「諸般の事情」(厚生労働省)で直前に中止に。「社会全体が日本との関係を前進させる雰囲気ではなくなっている」(日中関係筋)状況だ。

中国では、深センの事件後、無差別殺傷事件が相次いだ。長引く景気低迷による生活苦などが要因とされる。「社会に不満を募らせる人々が反日宣伝に触発され、いつ日本人に矛先を向けてもおかしくない」。ある外交関係者はそう嘆息した。

【時事通信社】 〔写真説明〕中国人民抗日戦争記念館で開かれている「戦勝80周年」の企画展=8月27日、北京 〔写真説明〕中国人民抗日戦争記念館で開かれている「戦勝80周年」の企画展=8月27日、北京

2025年09月19日 08時25分


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