
【ワシントン時事】米政府機関の一部閉鎖が11月1日で、1カ月となる見込みだ。議会与野党の対立でつなぎ予算成立のめどが立たず、再開は全く見通せない。こうした中、農務省は財源枯渇を理由に、低所得者向けの食料購入補助の支給を11月に停止する方針を表明。社会に波紋が広がっている。
「このままなら、4000万人が食料品店に行けなくなる」。30日、首都ワシントン中心部にある農務省前で行われた補助停止への抗議集会で、同省元高官はこう懸念を示した。「フードスタンプ」として知られる食料購入補助は、米社会の欠かせないセーフティーネット(安全網)。聴衆からは「恥を知れ」との声が上がった。
集会に参加したワシントンのフードバンクのボランティアは「今週末は補助停止でさらに多くの人が訪れる」と見込む。政府閉鎖で給料が支払われない職員も遠くから足を運ぶため、フードバンクは既にコロナ禍後で最も忙しい状況という。
集会の一角で、乾麺など寄付用の食料を提供していたウィット・マスターズさん(49)が勤めていた会社は、トランプ政権が進めた海外援助機関「国際開発局(USAID)」解体のあおりで契約が打ち切られ倒産。「今年2月から失業中だ」と明かした。ただ、「若干余った食料がある。できることをしたかった」と話した。
上院で、与党共和党主導のつなぎ予算案は13回否決された。医療予算の増額を巡って対立する与野党に歩み寄る気配はない。「勤労世帯や政府職員にとって厳しい時期だ。連帯を示さなければならない」と、マスターズさんは訴えた。
【時事通信社】
〔写真説明〕米農務省前で行われた、食料購入補助停止に対する抗議集会=30日、ワシントン
2025年10月31日 20時31分