
【ベルリン時事】東京電力福島第1原発の事故の重大性を踏まえ、2023年4月に全ての原子炉を廃止したドイツ。再生可能エネルギーの普及は途上で、電力供給の要となる天然ガスの安定調達は国際情勢の動揺でおぼつかない。エネルギー価格が上昇するたびに「原発があれば」との恨み節が漏れる。「核のゴミ」の行き先は見通せず、「脱原発」の課題は残ったままだ。
「必要なのは手頃な価格のエネルギー。原子力や石炭火力発電だ」。極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」は、今月8日に南西部バーデン・ビュルテンベルク州で実施された州議会議員選挙で、原発や石炭回帰を主張。製造業が強い同州で共感を得て、議席を倍増させた。
ドイツの昨年の総発電量に占める再エネの割合は58.8%に達したが、前年比では0.3ポイント上昇と伸び悩んだ。不足時の頼みとなるガスは輸入に依存し、市場価格の影響を受けやすい。
23、24両年のドイツ経済は、エネルギー危機が一因となりマイナス成長に転落。昨年5月に発足したメルツ政権は、脱炭素よりも景気回復を優先しており、30年までに温室効果ガス排出量を1990年比で65%削減する政府目標は「達成がますます困難になっている」(独誌シュピーゲル)。
もっとも、原子炉の再稼働や新設は政治・経済的に非現実的。独市民は原発の有用性よりもリスクを重くみている。目下の課題は、約1万7000トンの使用済み核燃料の最終処分地の選定だ。
ゼロから候補地を絞る作業はなお初期段階で、2020年に地質条件が合う国土の54%を特定して以降、停滞している。31年までの候補地選定を当初目指したが、計画の外部評価を委託された専門家らは住民対話などの見通しの甘さを指摘し「最も早くても74年までかかる」と分析。独メディアは、放射性廃棄物の搬入完了までを見据えると「真の脱原発は2100年になる」と伝えている。
【時事通信社】
〔写真説明〕原発から出た高レベル放射性廃棄物の容器が並ぶ中間貯蔵施設=2025年9月18日、ドイツ西部アーハウス(AFP時事)
2026年03月13日 16時00分