
戦後日本の安全保障政策の転換点となった安保関連法の施行から29日で10年。この間、自衛隊の活動範囲は年々広がり、イラン情勢が2月末に急激に悪化すると、集団的自衛権の行使が可能になる「存立危機事態」の初認定も取り沙汰された。国際情勢が不透明感を増す中、国会の監視機能強化を求める声が野党から改めて上がる。
「平和安全法制によって日米同盟はかつてないほど強固となり、抑止力・対処力も向上した。地域・国際社会の平和と安全により積極的に貢献できるようになった」。木原稔官房長官は27日の記者会見で、安保関連法の意義をこう強調した。
安保関連法は泥縄式に拡大してきた自衛隊の任務を整理し直し、憲法違反とされてきた集団的自衛権の行使を一部容認した法制だ。存立危機事態に加え「武力攻撃事態」「重要影響事態」などの概念を整理。自衛隊が他国軍の艦艇や航空機を守る「武器等防護」、離れた場所で襲われた民間人らを保護する「駆け付け警護」に道が開かれた。
活動の実績は着実に重なっている。武器等防護で護衛した回数は2024年末までで米国が140回、オーストラリアが10回に上る。自衛隊制服組トップの内倉浩昭統合幕僚長は「10年間で信頼関係は向上した」と指摘する。昨年8月には海上自衛隊の護衛艦が英海軍の空母を初めて警護した。
16年には南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣部隊に「駆け付け警護」の任務が与えられた。防衛省関係者は「国際貢献の幅は広がっている」と語った。
2月末には米国とイスラエルがイランを攻撃し、イランが原油輸送の要衝ホルムズ海峡を事実上封鎖。安保関連法の国会審議で当時の安倍晋三首相が存立危機事態として例示したケースが現実となり、関係者によると、政府は存立危機事態に認定し得るかなどを水面下でシミュレーションした。
政府はこれまでのところ「事態に該当するという判断は行っていない」と否定的な見解を繰り返しており、自衛隊の貢献としては自衛隊法に基づく戦闘終結後の機雷掃海が有力視されている。
存立危機事態を巡っては、高市早苗首相が昨年11月の国会答弁で、台湾有事が起きれば認定があり得ると発言し、日中関係が急速に冷え込む事態も招いた。認定の有無は政府の裁量が大きく、野党からは「極めて限定的に解釈すべきだ」(中道改革連合の小川淳也代表)との声が改めて強まる。
安保関連法成立直前の15年9月、自民、公明両党などの党首は「国会が民主的統制の機能を果たす」として、自衛隊活動を監視・検証する国会組織の検討をうたった合意書を交わした。公明の西田実仁幹事長は27日の会見でこの合意を振り返り、「しっかり議論を深めていく必要がある。現下の状況を見ればなおさらだ」と語った。
【時事通信社】
〔写真説明〕米艦防護へ横須賀基地を出港する海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」(奥)=2017年5月、神奈川県横須賀市
2026年03月29日 07時01分