故郷相互訪問で関係アピール=日韓首脳、歴史問題は封印―米中ロ朝「リスク」共有



【安東時事】19日の韓国・安東市での日韓首脳会談により、高市早苗首相と李在明韓国大統領はそれぞれの故郷を互いに訪問した形となった。安全保障環境が厳しさを増す中、喉元に刺さったままの歴史問題を封印し、関係改善をアピールした形だ。ただ、歴史問題は両国間に依然横たわっており、安保面での協力強化は一朝一夕には進みそうにない。

◇「今度は温泉」

「時差もないので、しょっちゅう電話し合おうと約束した。次回は日本にお越しいただく。温泉にしようかな」。会談後の共同記者発表で首相がこう説明すると、大統領は手をたたいて喜んだ。

ハイペースで会談を重ねる両首脳は最近、「蜜月」関係の演出に腐心している。1月の大統領の来日時には「ドラムをたたくのが夢」だった大統領を首相が指南し、両首脳がセッション。今回は大統領が「国賓級」でもてなし、世界文化遺産「河回マウル」で和やかな時間を共有した。

元徴用工問題を巡る2018年の韓国大法院判決をきっかけに「戦後最悪」と言われるまで悪化した日韓関係。しかし、保守系の尹錫悦大統領(当時)が23年に同問題の解決策を発表すると、関係は一転して改善に向かった。

革新系の李大統領は就任前に対日批判を繰り返していた過去があり、当初は関係悪化が危ぶまれた。だが、大統領は25年6月に就任すると歴史問題への言及を封印。同10月に就いた首相も「竹島の日」記念式典への閣僚派遣や靖国神社参拝を見送り、関係は表向き深まりつつある。

両首脳の相互往来「シャトル外交」は加速しており、昨年10月の高市首相就任後の日韓首脳の顔合わせは今回で4回目。日本外務省筋によると、訪韓の日程を打診された首相は「行く。シャトル外交は早ければ早い方がいい」と即答したという。

◇安保協力深化難しく

両首脳が関係改善を急ぐのは両国が「地政学リスク」を共有しているためだ。覇権主義的な動きを強める中国、核・ミサイル開発を進める北朝鮮、両国と連携するロシアなど、東アジアの安保環境は厳しい。日韓両国にとっては米国を含めた日米韓の連携がカギとなるが、米国第一主義を掲げるトランプ米大統領の外交姿勢は揺れている。

首相は13~15日の米中首脳会談についてトランプ氏から北京出発直後に電話で報告を受けたが、会談時間は約15分。米韓首脳の電話が実現したのは17日だった。両首脳は共同記者発表で、日米韓3カ国による「連携の重要性」を強調した。

もっとも、日韓間には温度差もある。日本側は安保協力深化に向け、韓国との物品役務相互提供協定(ACSA)締結を目指すが、韓国側は慎重姿勢を崩していない。植民地支配の歴史を踏まえ、大統領の支持層が自衛隊と韓国軍の連携強化に反発していることが背景にあるとされる。

日本政府は今回、朝鮮半島出身者らが戦時中に働いていた山口県宇部市の海底炭鉱「長生炭鉱」跡で見つかった遺骨のDNA型鑑定の実施を会談前日に発表するなど、歴史問題での配慮も忘れなかった。日本政府関係者は「歴史問題の火種は消えていない」と気を引き締めるように語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕共同記者発表で発言する高市早苗首相(左)。右は韓国の李在明大統領=19日午後、韓国・安東市 〔写真説明〕共同記者発表に臨む高市早苗首相(左)と韓国の李在明大統領=19日午後、韓国・安東市 〔写真説明〕会談前に握手する高市早苗首相(左)と韓国の李在明大統領=19日午後、韓国・安東

2026年05月20日 07時06分


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