
【マクデブルク時事】6日に実施されたドイツ東部ザクセン・アンハルト州議選で圧勝した極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」。愛国心をうたい、移民を攻撃する過激な主張はナチスをほうふつとさせ、攻撃を受ける人々の間で警戒が高まっている。
「やつら(外国人)は大挙して押し寄せ、われわれの金を浪費しようとする。(ドイツでは)怠けていても、うまい食べ物が勝手に口に入ってくる。誰かをナイフで刺したとしても、自由な遠くの故郷より、ここの刑務所で暮らす方が良いと思っている」。昨年3月の集会でこう露骨な人種差別的発言をしたのはAfDのティルシュナイダー州議。政策立案の中心人物の一人とされる。
「言葉の暴力性が強くなっている。ずっと聞いていると、あたかも真実のように感じてしまう。それが怖い」。ドイツ東部で35年間暮らしてきた貝山美夏さん(63)=東京都出身=は、長年人種差別を目の当たりにしてきたが、これほどの危機を感じることはなかったと語る。
貝山さんが幹部を務め、州内120以上の多様な移民団体を束ねる互助組織「ラムザ」は、活動資金の半分を占める州からの補助金停止に備えている。外国人を追い出せば元のドイツに戻ると考える風潮さえあると貝山さん。「移民だけの問題にとどまらず、メディアの自由や司法の独立もどんどん崩れていく。昔も今も、本気で問題だと捉えないことが一番危険だ」と訴えた。
AfDの批判対象は20世紀を代表する美術学校「バウハウス」にも及ぶ。伝統にとらわれず機能性を重視する「モダニズム」運動をけん引し、州中部デッサウの校舎は世界遺産に指定されている。「(ドイツ的な)アイデンティティーの排除」が目指されていると敵視するAfDの姿勢は、バウハウスを弾圧し1933年に閉鎖に追い込んだナチスと重なる。
バウハウスの遺産を管理・展示する財団は、AfDが政権を握れば「運営に直接的な影響を及ぼす」と警戒し、「AfDの『愛国的文化政策』は、文化の視野を著しく狭める」と反論した。
新聞やテレビはAfDを批判的に扱ってきたが、支持者らは「『彼らはナチスだ』などと描きたがるが、そんな演説は聞いたことがない」「ニュースは一方的過ぎる」と反発している。AfDは公約で、公共放送が「政治的に中立ではない」として資金供給停止を示唆している。
【時事通信社】
〔写真説明〕取材に応じる貝山美夏さん=1日、ドイツ東部ザクセン・アンハルト州デッサウ
〔写真説明〕美術学校「バウハウス」の校舎=1日、ドイツ東部ザクセン・アンハルト州デッサウ
2026年09月08日 12時33分