
石油元売り大手が国内に展開する製油所の存在感が高まっている。脱炭素の流れの鈍化が石油需要を下支えしていることに加え、中東情勢の不安定化によって原油調達の混乱が続く中、石油製品の国内供給維持にも寄与。製油所のエネルギー安全保障上の役割が見直された形だ。
製油所は、常圧蒸留装置で原油を加熱し、ガソリンやナフサ、重油など石油製品につくり変える施設。石油元売り会社が国内で19カ所の製油所を運営している。出光興産の北海道製油所(苫小牧市)では1日当たり14万バレル(約2万2000キロリットル)の処理能力があり、国内需要の5%を担う。
原油は産出地域によって含まれる成分が異なる。これまで元売り各社は調達コストが安価な中東産原油を効率的に精製できるよう製油所を整備してきた。しかし、中東情勢の悪化以降、中東産の輸入は減少。代替調達した北米産などを、備蓄していた中東産と混ぜることで対応してきた。
北海道製油所でも、中東産に北米産を一部混ぜて乗り切ってきた。これまでと異なる性質の原油を使うため、装置の配管が腐食していないかなどを見極めながら運用している。
出光興産は5月、2030年までに日量30万バレルの石油精製能力を減らす製油所の閉鎖方針を撤回し、国内6カ所体制を維持する意向を示した。酒井則明社長は「少しでも製油所がある方が産地ごとの原油の性状に合わせた運転ができる」と語った。有識者からも「『製油所なんて持たず、全部輸入すればいい』という意見は下火になっていくだろう」との声が上がる。
政府はエネルギー安保の一環として、中東産以外の原油処理能力を高める設備改修の支援を検討する。ただ、それでも元売り各社は投資に二の足を踏んでいる。北海道製油所の原英之所長は「中東域内の原油がある程度手に入れば域外の原油は処理できる」と指摘する。
ホルムズ海峡の実質封鎖が続く中、同海峡を迂回(うかい)するサウジアラビアの原油パイプラインが今月、攻撃を受けて損傷した。中東産調達の正常化は見通せないが、石油連盟の木藤俊一会長(出光興産会長)は「中東産の優位性はやはり強い」と述べた。
【時事通信社】
〔写真説明〕出光興産北海道製油所の常圧蒸留装置=1日、北海道苫小牧市
2026年09月23日 08時03分