
【ニューヨーク時事】3日投開票された米中間選挙での共和党の歴史的大敗で、米実業家イーロン・マスク氏への逆風が強まるとの見方が広がっている。米宇宙・人工知能(AI)企業スペースXや電気自動車(EV)大手テスラなど「マスク帝国」の事業に悪影響が及ぶと懸念が浮上。トランプ米大統領との関係も深く「政商」の一面を持つマスク氏個人への追及が強まる可能性も指摘されている。
マスク氏は、共和党の牙城だった南部テキサス州で事業拡大を進めてきた。企業規制が緩いことや州の政治姿勢に絡み、テスラやスペースXの本拠地を同州に移転。2025年には再使用型ロケット「スターシップ」の開発・打ち上げ拠点となっているスペースXの企業城下町「スターベース市」が州内に誕生したほか、半導体工場「テラファブ」構想でも州の補助金や税優遇を受けている。
中間選挙で同州では、民主党の新星タラリコ氏が上院選で同党として38年ぶりに勝利。知事選でも、AIに不可欠なデータセンターの規制を掲げた民主党のイノホサ氏が共和党の現職アボット氏を撃破した。スペースXは6月の上場時、AI関連事業の潜在的な市場規模を26兆5000億ドル(約4200兆円)と試算したが、テキサス州や他地域でデータセンター開発が停滞すれば、マスク氏の目算が大きく狂う可能性がある。
政府との関係では、米政治専門メディアのポリティコが10月、マスク氏がウクライナ軍の利用を巡りスペースXの衛星通信「スターリンク」に制限をかけたとする疑惑や、「政府効率化省(DOGE)」による政府職員の大量削減を巡り、民主党側がマスク氏を調査しようとしていると報じた。議会がマスク氏に召喚状を出す可能性も取り沙汰されている。
こうした中、トランプ氏は中間選挙直前、民主党が議会の支配権を得た場合はマスク氏に「予防的な恩赦」を与える用意があると発言。共和党最大の支援者であるマスク氏を守る姿勢を示したが、「『恩赦』という言葉が、『何か不正をしたのか』という疑念をかえって強めた」(日系証券筋)と指摘も出ている。
もっとも、スペースXは米航空宇宙局(NASA)が主導する国際月探査「アルテミス計画」にとって不可欠な存在。別の日系証券筋は「中国との宇宙やAIでの競争が激化する中、民主党にもマスク氏の存在は重要だ」と指摘した。また、データセンター開発の規制導入は、マスク氏が目指す人工衛星による「軌道データセンター」構想の重要性を高めるとの見方もある。
【時事通信社】
〔写真説明〕米実業家のイーロン・マスク氏=9月29日、ワシントン(EPA時事)
2026年11月08日 07時46分