オープン型AI、ハッカーが悪用=中国発モデル、安全装置を解除―サイバー攻撃が低コスト化



世界中で急増するサイバー攻撃では、進化する人工知能(AI)が悪用され、攻撃の大規模化とスピードが加速している。特に脅威となっているのが中国発のAIモデルの悪用だ。誰でも自由に低コストで複製・改変できる「オープン型」モデルが多く、世界のハッカーが、誤った使い方を防ぐための安全装置機能(ガードレール)を外し、侵入ツールとして悪用しているもようだ。

◇闇市場に改悪版

膨大な資金と計算資源を投じ、最先端AIモデルの開発で先行するアンソロピックやオープンAIなど著名な米国企業は安全性を理由に「クローズ型」を採用する。これに対し、中国企業はAIが言葉の関係性を予測して回答するための知識に当たる「パラメーター(重み)」を無償公開するオープン型のモデルに注力。外部の開発者が公開技術の改善や応用の方法を練り、計算資源に限りがある中でも米企業との性能差を縮めている。

ただ、オープン型には、安全装置を外すなど悪用リスクが高い。9~10月に韓国で相次いだ銀行への不正アクセスでは、中国製モデルの「ディープシーク」や「GLM」が使用された。システムの脆弱(ぜいじゃく)性を探す侵入テストを自動化する中国系のAIツール「ARTEX(アルテックス)」と連携させて、大規模なサイバー攻撃につながった。

サイバー空間の脅威分析を手掛けるカナダ企業フレアはブログで、ハッカーがダークウェブ(闇サイト群)や通信アプリのテレグラムといった秘匿性が高い手段で、安全装置を外した改悪モデルを販売していると指摘する。将来的に改悪モデルや攻撃自動化ツールなどの「闇市場」が形成されると警鐘を鳴らす。

中国製AIを武器化するのは、世界各国でサイバー攻撃を仕掛ける「ストーム―0940」など中国政府との関係が指摘されるハッカー集団だけではない。米セキュリティー企業ストレイカーは、中南米系の「サイバーカルテル」が使う複数のモデルの一つに、中国の「Kimi」があったと報告している。

◇防御にもオープン型

無償公開されたオープン型は、自前で開発・運用環境を管理できるため、利用コストが安い。オープン型の擁護者も多く、7月にはマイクロソフトなど名だたる米企業が「防御側にも同等の能力を持つモデルへのアクセスが必要だ」とする公開書簡に署名。オープン型を活用した防御力の強化を訴える。

また、同月に明らかになったオープンAIのAIモデルによる米新興AI企業ハギングフェイスのシステムへの侵入では、原因究明にGLMが使われた。同社によると、米国の最先端モデルはシステムへの攻撃と判定し、強固な安全装置が障壁となって解析に使えなかったという。

米半導体大手エヌビディアのジェンスン・フアン最高経営責任者(CEO)はハギングフェイスの事例を引き合いに、「最高のオープン型とクローズ型の掛け合わせが防御側に必要だ」と強調している。

【時事通信社】

2026年11月08日 07時03分

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