【サンパウロ時事】世界最大のアマゾン熱帯雨林を抱えるブラジルのルラ大統領は、アマゾン保護に政策転換したことを印象付けようと、国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30)を誘致した。会議では新興・途上国「グローバルサウス」の代表格として、温暖化防止に向けた協力を先進国から引き出したい考えだ。
ルラ氏は大統領選当選直後に開かれた2022年11月のCOPで、会議誘致を表明した。ボルソナロ前大統領はアマゾンの経済開発を優先。その結果、森林伐採が加速し、国際的に孤立した。森林破壊の半減に成功したルラ氏は「世界に見せたいものが多くある」と自信を示す。
伝統的に多国間主義の外交を展開するブラジルは、グローバルサウスに軸足を置く。23年8月にアマゾン熱帯雨林を共有する8カ国から成るアマゾン協力条約機構首脳会議を開催し、今年は新興国グループ「BRICS」の議長国を務める。議論を主導し、温暖化のリスクにさらされた国々を「一つの声」にまとめた。具体策では、COP30首脳級会合で熱帯林の保全に向けた基金を立ち上げ、50カ国以上の賛同を得た。
ルラ氏は4月に国連と共催したオンライン会合で「気候危機を否定しても危機が去ることはない」と強調。トランプ米政権が温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの離脱を表明する中、資金支援に消極的な先進国に行動を促した。
現実的な対応ものぞかせる。COPを前にルラ政権は国営石油会社にアマゾン河口の油田探査を承認した。ルラ氏は「化石燃料からの転換にはお金がかかる」と主張するが、温暖化防止に逆行するとして環境団体から批判を浴びた。
2025年11月11日 12時39分
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