
【ニューヨーク時事】米著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる投資会社バークシャー・ハサウェイの株価がさえない。「投資の神様」と称されるバフェット氏が年末に経営の一線から身を引くのを前に、金融市場では危機感が台頭。同社株は5月に付けた最高値から直近で1割弱下げた。米投資銀行がバークシャーの経営に懸念を示したことも相まって売り圧力がくすぶったままだ。
5月3日の年次株主総会でバフェット氏が打ち出す投資戦略などへの期待感から、株価は開催直前まで大きく上昇した。ところが、同氏は総会で、年末に最高経営責任者(CEO)を退き、後任にグレッグ・アベル副会長を指名すると宣言。投資家の間で失望感が広がり、夏場まで売りに歯止めがかからない状況が続いた。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは株価の推移について「まるでもう退いたかのような動きだ」と論評した。
投資銀KBWが先月下旬、バークシャーの投資判断を「売り」推奨に引き下げたことも冷や水を浴びせた。投資収益の縮小圧力や、トランプ米政権の高関税政策のあおりで傘下の鉄道貨物会社が低成長に陥るリスクなどを列挙し、「多くの物事が間違った方向に進んでいる」と指摘。バフェット氏の卓越した能力にも触れ、「トップ交代はリスクだ」と厳しい評価を下した。
バークシャーの9月末時点の手元資金は3817億ドル(約59兆円)と過去最高を更新した。景気不透明感が漂う中、投資に慎重な姿勢がうかがえる。エネルギー事業などを統括するアベル氏は、経営手腕に定評があるものの、投資先を開拓する能力は未知数。株価回復には、投資家の共感を得られる戦略を示せるかどうかがカギを握りそうだ。
【時事通信社】
〔写真説明〕米投資会社バークシャー・ハサウェイを率いる著名投資家のウォーレン・バフェット氏=2014年5月、ネブラスカ州オマハ
2025年11月09日 07時05分