「台湾有事は存立危機」波紋=高市首相答弁、立民が撤回要求―中国反発



高市早苗首相が台湾有事を巡って「存立危機事態」に該当する場合があると明言したことが波紋を広げている。従来の政府見解より踏み込んだ内容で、問題視した立憲民主党は10日の衆院予算委員会で撤回を要求した。中国側は反発しており、日中関係に影響を与える可能性もある。

発言は7日の衆院予算委の答弁で出た。首相は「(中国が)戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、どう考えても存立危機事態になり得る」と述べた。

存立危機事態は2015年成立の安全保障関連法に明記された。日本と密接な関係にある他国への武力攻撃により日本の存立が脅かされるなどの明白な危険がある場合と規定。限定的な集団的自衛権の行使を可能とした。

立民の大串博志氏は10日の質疑で「存立危機事態と認定されれば防衛出動だ。戦争に入るという判断で、これまでの内閣は発言を慎んできた」と指摘。撤回を求めた。

首相は「最悪のケース」を想定した答弁だったと説明し、「今後は特定のケースについてこの場で明言することは慎む」と釈明。同時に「従来の政府の立場を変えるものではない」として撤回を拒否した。

政府は台湾有事が「存立危機事態」に当たるかどうかについて、「全ての情報を総合し、客観的、合理的に判断するため、一概に答えることは困難だ」と明言を避けてきた。「中国に手の内をさらさない」(政府関係者)という安保上の理由に加え、台湾を「核心的利益の中の核心」と主張する習近平政権を無用に刺激することは得策ではないとの判断がある。

中国の呉江浩駐日大使は10日、自身のX(旧ツイッター)で「『台湾有事は日本有事』をあおり、日本を中国分断の戦車に縛り付けるなら、引き返せない誤った道を歩むだけだ」とけん制。中国外務省は「内政への粗暴な干渉」と非難した。

首相は経済安保担当相だった昨年の自民党総裁選で同様の発言をした。「率直な物言いを好む」(周辺)スタイルを背景に挙げる向きもある。23年には、野党議員に渡った放送法の政治的公平性の解釈に関する総務省文書を「怪文書の類い」と断じ、物議を醸した。

「首相発言は危うい。無理に踏み込む必要はなく、過去の自身の発言や支援者に引きずられている」。自民の閣僚経験者はこう懸念を示した。

【時事通信社】 〔写真説明〕衆院予算委員会で答弁する高市早苗首相=10日、国会内 〔写真説明〕衆院予算委員会で質問する立憲民主党の大串博志氏=10日、国会内

2025年11月11日 07時03分


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