株高で格差拡大に拍車=低所得層は賃上げ鈍化―米



【ニューヨーク時事】米国で、高所得者と低所得者の経済格差拡大に歯止めがかからない。賃金上昇率の高さや、人工知能(AI)の成長拡大期待がもたらした株高の恩恵を受ける富裕層が消費をけん引。一方、賃金の伸び鈍化や、トランプ政権の高関税政策による物価高で低所得者の生活は厳しさを増すばかり。政権が格差拡大を放置すれば、社会の分断が深まる恐れがある。

アトランタ連邦準備銀行によると、足元の賃金上昇率は高所得者が前年比4.6%と高水準を維持する半面、低所得者は3.6%と減速基調が継続。アルファベットの「K」の字のように格差が広がり、経済の二極化が進む状態はしばしば「K字経済」と呼ばれる。

富の偏在も事態を深刻化させる。連邦準備制度理事会(FRB)の統計では、上位10%の富裕層が株式の9割を握る。株高を反映した保有時価(4~6月期)は前年同期比14%増の44兆6000億ドル(約7000兆円)に達し、5000億ドルにとどまる下位50%との差は歴然としている。

高所得者の賃金上昇や株高に伴い、消費動向も二極化が進行。高所得者が旅行など不要不急の出費を増やす中、金融大手バンク・オブ・アメリカは、物価高に苦しむ低所得者のうち「ぎりぎりの生活」を強いられる世帯が増えていると分析する。

物価高などを背景とした支持率低下に危機感を持ったとみられるトランプ大統領は今月中旬、バナナや牛肉など一部農産物を対象に相互関税を撤廃した。低所得者の負担軽減につながるものの、対症療法にすぎないとの見方が大勢だ。

大和総研ニューヨークリサーチセンターの藤原翼研究員は「政権が大型減税といった富裕層が恩恵を受けやすい政策を実施する中、格差拡大の傾向は続く」と予測。ただ、来年の中間選挙をにらみ、「中低所得者層にも配慮し、政策の方向性が見直される可能性もある」と指摘した。

〔写真説明〕米カリフォルニア州オークランドの慈善施設で行われた感謝祭の食料無料配布で、食料の入った箱を頭に乗せて運ぶ少女=24日(AFP時事)

2025年11月27日 14時24分


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