
【ワシントン、ニューヨーク、サンパウロ時事】貿易協定「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」は7月1日、3カ国が延長の可否を議論する初の共同見直しに臨む。延長を求めるメキシコ・カナダに対し、後ろ向きなトランプ大統領は2カ国と個別に交渉を進める方針。域内の無関税輸出の条件となる自動車の原産地規則などを巡って駆け引きを続けている。
「協定がない方がうまくいく」。トランプ氏はこれまで、離脱も辞さない構えで揺さぶりを続けてきた。
USMCAは、3カ国が共同見直しで協定継続で一致しなければ2036年に失効する。今回合意に至らない場合、10年にわたって毎年協議を継続する取り決めだ。北米への供給網の移転を進めてきた日本企業などにとって、交渉の行方が業績に響く恐れがある。
3カ国は7月1日のオンライン会合で、16年間の協定延長に関し、それぞれの立場を表明する。メキシコ・カナダは継続を正式に要請したが、米国は延長の承認を留保することで時間を稼ぐ可能性がある。自国に有利な条件を引き出すため、2カ国との個別交渉を「主戦場」とする考えだ。メキシコのエブラルド経済相は今回の会合を「見直しの出発点」と位置付ける。
2国間交渉を重視する米政府は、原産地規則の厳格化によって、メキシコなどを経由して流入する中国製品の排除を狙う。メキシコとは既に2度協議し、域外からの輸入品への関税引き上げを求めた。米メディアによると、域内調達比率の下限を現行の75%から82%に引き上げるよう要求。域外からの部品調達をさらに減らしたい考えだ。
米政府はメキシコとの3回目の交渉を7月下旬に予定する一方、鉄鋼・アルミニウム関税などで貿易摩擦を抱えるカナダとは、正式な協議は実現していない。カナダのルブラン対米貿易担当相は「交渉と並行して、分野別関税に対処するための米国との協議が不可欠」との認識を示している。
米国の離脱は条文上可能で、他国への通知から半年後に実現する。ただ、米国内でも「多くの業種が恩恵を受けており、協定そのものの予見可能性を維持することが最も重要だ」(全米製造業協会)などと継続を強く求める声が噴出。中間選挙や28年の大統領選を控える中、トランプ氏がやすやすと離脱に踏み切れるわけではない。
米シンクタンク「タックス・ファンデーション」は、米国の離脱などによってUSMCAの優遇措置がなくなった場合、米国は27年から10年間で、関税の復活も含めて4658億ドル(約75兆円)の打撃を受けると試算。長期的に国内総生産(GDP)は0.4%押し下げられるとして、協定継続は「米経済にとって不可欠だ」と強調している。
〔写真説明〕トランプ米大統領=26日、ワシントン(EPA時事)
2026年06月28日 07時06分