
文字や図形を識別し、「天才」として親しまれたチンパンジー「アイ」がこの世を去ってから1カ月。京都大ヒト行動進化研究センター(旧霊長類研究所、愛知県犬山市)がこのほど、追悼サイトを開設した。18年にわたり研究でアイと向き合ってきた足立幾磨准教授(47)=比較認知科学=は「チンパンジーの心や存在、ヒトについて多くのことを教えてくれた研究パートナーだった」と悼んだ。
アイはアフリカ生まれのメスで、1歳だった1977年に来所。「好奇心が強く、人間のつくった環境によく順応した」(足立准教授)ことから、翌78年にチンパンジーの思考や言語能力を調べる「アイ・プロジェクト」がスタートした。85年には英科学誌ネイチャーに論文が掲載されたほか、89年には近くにあった鍵を使っておりから「脱走」し、話題となった。
足立准教授によると、認知能力自体は「アイだけが特別だったわけではない」。同等の結果を出すチンパンジーもいたが、アイがさまざまな課題に意欲的に取り組んだことで、チンパンジーの認知機能を調べる方法が確立できたといい、「研究にとって特別な存在だった」と振り返った。
年齢を重ね、実験や食事よりも、研究者や飼育スタッフとの交流に関心が移っていったというアイ。腎臓に持病を抱え、昨年末からは食が細くなっていた。1月9日、多くの人に見守られながら旅立った。49歳だった。足立准教授の研究室内には、手作りの祭壇が設置された。
追悼サイトでは、追悼メッセージのほか、アイの息子のアユムを含む10頭の飼育環境改善に向けた寄付も募る。足立准教授は「今後もチンパンジーの心とヒトの本性について理解を深める研究を行っていく」と前を向いた。
〔写真説明〕京都大ヒト行動進化研究センターで飼育されていたチンパンジー「アイ」(同センター提供)
〔写真説明〕1月に死んだチンパンジー「アイ」の祭壇=4日、愛知県犬山市
〔写真説明〕足立幾磨
京都大准教授
2026年02月14日 14時30分