
不正な交通違反取り締まりで懲戒処分された神奈川県警の巡査部長は、計測が不完全でも違反を認定する強引な手法を繰り返し、勤務成績を表彰されたこともあった。検挙数のノルマはなかったというが、県警は「水準」を定めており、「件数ありき」につながったとの声もある。
県警の事情聴取に「悪質な違反者は交通の場から排除したかった。今思えば誤った正義感だった」と述べた巡査部長。経験が長く、同じ小隊の中に、乱暴な手法を注意できる隊員はいなかった。
スピード違反は、法定速度で走る捜査車両が、追い抜いていった車を一定区間追跡しながら速度を計測するなどして認定する。だが、巡査部長は、追跡に気付いて減速した車など、計測が不十分なケースでも検挙。反則切符には、足りない追跡距離を数十メートル水増しして記載し、適切な取り締まりを装っていた。
定められた実況見分への立ち会いも、「そんな時間があれば1人でも多く切符を切る」と拒否。そのため、小隊の隊員は、過去の記録やインターネットの地図情報を流用して見分調書のつじつまを合わせた。そのうちに、小隊では見分しないまま調書を作成するなどの不正が常態化した。
県警は毎年、今後1年間の取り締まり件数について、過去の実績などを基に、警察署や交通機動隊ごとに「水準」を定めて通知していた。長年続いていたが、不正発覚後の2025年4月、「誤った理解を招く」として廃止に。ある警察幹部は「通知は全国的にも例はなく、ノルマと受け取られることを考えれば、不適切だった」と話す。
通知廃止の影響は不明だが、神奈川県警の25年の交通違反検挙件数(約30万4000件)は前年より10万件以上も減少。一方、交通事故死者数は139人で全国最多だった。別の警察幹部は「必要な取り締まりもできていないなら問題だ。再発防止を徹底し、職務への信用を回復しないといけない」と強調した。
〔写真説明〕神奈川県警本部=横浜市中区
2026年02月20日 17時59分